アメリカのナショナル・セキュリテイ・カウンシルが最近出したレポートによれば、エジプトの中東地域における役割に対する、アメリカの期待は大きく後退しているようだ。
その主たる原因は、ムバーラク大統領の高齢化によるようだ。82歳とも83歳ともいわれるムバーラク大統領では、今の難局では効果的な活躍が、出来ないということだ。
それでは、誰がムバーラク大統領の後継者として、代役を務められるかということになると、第一に考えられるのは、ムバーラク大統領の子息である、二男のガマール・ムバーラクが挙げられる。
しかし、ガマール・ムバーラクについては、経済界との癒着と、その結果としての経済政策での失敗で、国民からの支持は、全くなくなっているというのが、ほとんどのカイロっ子の判断のようだ。
次いで挙げられるのが、オマル・スレイマーン情報長管だが、彼も結局は有能な官吏ではあるが、大統領代行と呼ばれるにふさわしい、器ではないと言われている。結局のところ、しかるべき代行者も後継者もいない、というのがエジプトの国内事情のようだ。
そこで、アメリカが期待するエジプトに代わる、中東・アラブ諸国のリード役の国家は、サウジアラビアであるようだが、それは表向きの話ではないのか。アメリカがアラブ産油国から金を巻き上げて、自国の大きな赤字を埋める上では、サウジアラビアはいい国であろうが、中東の政治外交における、大役を果たせるとは限らないだろう。
そこで出てくるのが、トルコだと思われる。アメリカはいま、中東ではイランの抑え込みあるいは弱体化、パレスチナのハマース・ファタハの仲介と統一政府の結成、ヘズブラとレバノン政府の関係調整、イラク問題の処理などに最大の関心を払っていよう。
サウジアラビアも、イラクに対する、イランの影響力を抑え込みたい、と願っていようし、パレスチナ問題の解決を、図りたいとも考えていよう。しかし、今回のエジプトの失敗で見られるように、ファタハとハマースとの交渉で、仲介役に立てるのは、トルコしかないのではないか。
もちろん、サウジアラビアには小切手外交がありはするが、そのカードは切り方によっては、却ってファタハとハマースとの間に、不信感を募り拡大し、関係悪化に導く危険性がある。
ガザ戦争後にアラブ諸国が決定した、ガザ再建の援助金数十億ドルの分捕り合戦が、ファタハとハマースとの間に、起こっていることからも分かろう。結局のころ、金を十分には持たないが、知恵を使うトルコにこそ、中東地域での主導力があるのではないか。