米イラン・戦争平和いずれも湾岸諸国には不安

2009年2月19日

 ブッシュ大統領の時代には、アメリカがイランに軍事攻撃を加えるのではないか、ということが湾岸諸国にとって、大きな懸念材料だった。もし戦争になれば、湾岸諸国にアメリカ軍の基地があるということで、イランが攻撃してくる危険性が、非常に高かったからだ。

 そのブッシュ大統領の任期が終わり、オバマ大統領の時代に入っても、湾岸諸国の不安は消えないようだ。オバマ大統領はブッシュ政権とは異なり、最初にイランとの対話を考慮する、と言いだしたからだ。

 もし、オバマ大統領の率いるアメリカが、イランの核開発を許すことになれば、湾岸諸国はイランが将来、核兵器を所有するという不安に、さいなまれることになるからだ。アメリカがイランの核兵器の開発を許可しないとしても、核開発を黙認するだけでも、湾岸諸国にとっては脅威となろう。

シーア派のイランが、核兵器を所有するということ、あるいは核技術の能力を向上させるということは、スンニー派の湾岸諸国にとって、大きな脅威となろうし、その兵器がたとえ湾岸諸国に向けて使用されなくとも、核兵器を持つことにつながる、高い核技術を持つ国家も、核兵器を持つ国家も、他国への干渉能力は、大きなものになることが、予測されるからだ。

核兵器の問題だけではあるまい、イランとアメリカとの関係が改善されれば、その結果として、アメリカの湾岸諸国に対する配慮は後退し、要求だけが前面に出てくる危険性もあろう。

イランはイランで、アメリカの軍事的脅威が後退すれば、その分だけ湾岸諸国に対し、強圧的姿勢をとることになろう。すでにバハレーンでは、シーア派国民が民主化要求などで、大規模デモを行っているし、ホメイニ革命が達成されて間もない1980年初期には、クウエイトでもイランの支援を受ける反体制派が、国王暗殺を企てたこともあった。

サウジアラビアにもアルカテイーフを始めとして、シーア派国民が居住している。イランがこれらのシーア派サウジアラビア国民に働き掛ける、可能性は否定できない。

同時に、アラブの中の反体制勢力に対する、イランの支援も強化される可能性がある。現在、レバノンのヘズブラやパレスチナのハマース、シリアに対する援助がおこなわれていると言われているが、アメリカの圧力が軽減されれば、もっとおおっぴらに援助が行われることになろう。

そのことは、アラブの穏健派諸国、なかでも王制諸国にとって、不安材料になるということでもある。バハレーンは既に、イランとのガス取引交渉を断念したが、それはイランのバハレーンに対する、内政干渉を嫌った結果であろうと思われる。アメリカの親切は気まぐれで、危険なものと湾岸諸国は痛感しているようだ。