トルコの民間団体が開催する、アバント会議が今年も開かれた。この会議は世界の問題、トルコと周辺諸国の問題をテーマに、世界中からゲストを集めて開かれているものだ。
トルコの中部ボル市に近い、アバント・リゾ-トで開催されるが、私も何度か招待されて参加したことがあるが、私は会議の席上、アメリカの新中東地図の話をして、物議をかもしたことがある。
今年のアバント会議は、トルコとイラクのクルド地区との関係を、どうするかということがメイン・テーマだったが、当然のことながら。イラクのクルド代表も参加し、PKK(クルド労働党)対応をどうするかも、テーマに上ったようだ。
最近、イラク中央政府もクルド自治政府も、トルコとの関係を重視しているようだが、その流れの中で今回の会議が、開催されたということだ。
会議では、トルコとイラクのクルド地区が国境を開放し、ヒトとモノの自由な往来を認めるべきだ、という結論を出している。それは、ベネルクス三国の経済交流関係のような、形になるべきだとしている。
そして、トルコ政府はクルド地区のエルビルに、領事館を開設し、トルコ・クルド双方の間の、交易をサポートすべきだとも主張している。この流れは、多分にすでに大まかなことが、決定しているのであろう。トルコのギュル大統領が近く、イラクのクルド地区の中心都市エルビルを、訪問する予定になっているようだ。
会議では、クルド地区のエルビル市が、アラブの都市というイメージを、濃くするべきではない、独自の文化を留めるべきだとも指摘している。しかし、同時にエルビルの人口構成を、クルド自治政府は変更すべきではない、ということも強調された。
これは、クルド地区に多数居住する、トルコ系イラク人(トルコマン)に対する、トルコ政府の配慮であろう。トルコの南東部の街(クルド人の居住者が多数を占める)デヤルバクルからの、エルビルへの直行便も検討されており、近い将来、デヤルバクル・エルビル便が就航することになろう。
現在、イラクのクルド地区には、5万人のトルコ人が滞在し、クルド地区の再建の仕事に従事している。このことは、クルド地区再建の95パーセントの仕事を、トルコ企業が請け負っているということの、裏付けでもある。
問題のPKKについては、トルコ政府側からすでに、武器を置いて普通の市民に戻るよう、呼びかけが始まっているが、イラクのクルド自治政府は、この会議へのPKKの参加を、呼びかけてもいたようだ。
この会議の内容は、極めて重要であろう。今後、トルコとクルド地区が、どのような関係になっていくのかを予測する上で、非常に重要な内容を含んでいるからだ。
トルコは自国内のPKK(クルド人)との問題を解決する上で、イラクのクルド自治政府との、良好な関係を構築することを、真剣に検討しているということだ。
将来、トルコとイラクのクルド地区は、連邦にも似た関係に、発展していくことが予測されるのではないか。その妥協案は、アメリカによってトルコが、同国東部を割譲させられて、クルド国家が出来上がる形よりも、トルコにとって有利な形であろう。(新中東地図参照)