イスラエルの選挙で、ネタニヤフ氏が党首を務めるリクード党が1,2議席差で、第二党につける好結果が生まれた。当然のこととして、彼は他党との連立を組み、政権を担当する可能性が、非常に高くなっている。
この選挙結果に、アラブ諸国は押し並べてノーの反応を示しているが、イスラエル国内のことゆえ、だからと言ってどうできるものでもない。パレスチナ自治政府のマハムード・アッバース議長は、当初は余裕を見せてか、誰の率いる政党が政権を担おうとも交渉を続ける、と余裕のある発言をしていた。
しかし、昨日の段階になると、さすがにネタニヤフ政権が恐ろしくなったのか、あるいは熟慮した結果なのか、反対の立場を口にし始めている。彼は世界が、ネタニヤフ氏の率いるイスラエル政府に対して、孤立させるべきだと言いだしたのだ。
他方、汎アラブ紙として世界的に有名なアルハヤート紙は、アメリカのオバマ大統領にとって、イスラエルはイランとの関係改善に、邪魔な存在になっている、という間接的な非難を、ネタニヤフ氏に対して行っている。
確かにそうであろう。ネタニヤフ氏はイランに対して、核兵器の製造を阻止するためには、軍事攻撃も辞さないという強硬論者の代表格だ。アメリカ政府はアフガニスタンへの対応で、現在物資の搬入で苦慮しており、イランとの関係改善が、アフガニスタン問題を処理するうえで、重要性を増していることを痛感している、
そのような状況もあり、アメリカのオバマ大統領は就任後、早い時期にイランとの関係改善に向けた、直接対話を考え始めているのだ。イラン側もこのアメリカの変化を的確に把握し、アメリカとの対話をする意思があることを、発表している。
イスラエルの存在が、アメリカにとって重荷となりつつあるなかで、労働党のバラク氏は、アメリカとの間でイランをめぐる話し合いをする、と言い始めているのは、そうした事情からであろう。
ネタニヤフ氏の政党が、次期イスラエル政権の中枢になることが、アメリカの利益にとって、マイナスであることを訴え、自党(労働党)との関係強化を図り、願わくば政権の座に就きたい、ということではないか。
つまり、今回の選挙で大躍進を遂げたリクード党、ネタニヤフ氏であるが、アメリカとの関係においても、アラブ諸国との関係でも、イランとの関係でも、非常に環境は厳しいということだ。その上、イスラエル内部ですらひび割れが起こりつつあるということだ。そのことは、ネタニヤフ氏を一層硬化させるのか、あるいは柔軟にさせるのか、もう少し時間がたたなければ判断できまい。