イスラエルの選挙で、右派のリクード党が現段階では、第一党にのし上がった。続いて、もう一つのイスラエル・ベイトヌ党も、第三位につける勢いだ。
リクード党とイスラエル・ベイトヌ党の連立が、既に話題に上り、ほぼ確実な様相を呈しているが、これに大きな不安を抱いているのが、アラブ諸国だ。なかでも、パレスチナ自治政府とハマースは、ともにイスラエルが大きく右に振れることに、不安を抱いている。
リクード党のネタニヤフ党首は、エルサレムの不分割を明確に語り、西岸地区での新たな入植を、奨励することを公言している。そうなれば、マハムード・アッバース議長は西岸地区の住民から、無能呼ばわりされることになろう。それどころか、まともにネタニヤフ氏が、相手にしてくれなくなるかもしれない。
ハマースもイスラエル政府が、強硬派によってリードされることになれば、どこまで殺戮が行われるのか不安であろう。ネタニヤフ氏は今回のガザ戦争で、オルメルト首相が行ったのは手緩いと言い、しかも停戦に至るのが早すぎた、と語ってもいる。
ネタニヤフ氏が新首相になれば、再度のガザに対する侵攻を、より強烈な形で展開される、危険性は高いだろう。そもそも、イスラエルの今回のガザ戦争の目的は、ハマース潰しであり、密輸トンネルの閉鎖であり、ロケット弾による攻撃の完全な阻止だった。
しかし、オルメルト政権はその戦争目的の、一つも実現できずに、停戦に至っている。ハマースは生き残り、国際的に認知度が上がり、武器密輸のトンネルは、エジプト政府に圧力をかけても、今だに機能している。そして、最も困ることに、ロケット弾によるガザからのイスラエルへの攻撃は、いまだに止んでいない。
ネタニヤフ氏が、再度のガザ攻撃を決断するとすれば、徹底的にやってのけるであろう。そうなれば、ガザの犠牲者数は1300人程度ではなく、その何倍にも膨れ上がる可能性が、あるということだ。
そうした事態を想定してか、アラブ連盟のムーサ事務総長は、イスラエルの新内閣に、不安と懸念を述べているし、シリアも同様であろう。そうしたなかで、マハムード・アッバース議長はあまり問題ない、という立場を明かしているが、何が根拠なのであろうか。
イスラエルの首相に、強硬派のネタニヤフ氏が就任したとしても、アメリカの支援なしには、できないと踏んでいるのであろうか。あくまでも、他力本願の、彼らしい判断であろうか。