サウジアラビアが、イスラム教の立場から、極めて保守的な国であることは、つとに知られている。
この国の女性たちには、自宅の中でしか、自由が認められない、という厳しいものだ。そのサウジアラビアの女性たちが、1990年の湾岸危機の時だったと思うが、自分で車を運転して、首都のリヤド市内で、デモを行ったことがある。
そのデモに参加した女性たちは、厳しい罰を受けたと伝えられている。具体的に、どのような罰であったのかは知らないが、車の運転をした女性の家の家長が、サウジアラビア社会の中で、恥をかくこととなり、家庭内で罰せられたものと思われる。
そうしたこともあり、サウジアラビアでは女性に運転を許可すべきかどうかということが、これまで何度となく議論されてきたが、未だに女性に運転の、自由を認めていない。
湾岸諸国はサウジアラビアと並び、保守的な国がほとんどだが、他の湾岸諸国では、女性による車の運転が認められている。そこで、サウジアラビアの王家につながる人物の夫人が、車の運転をしたいと言いだしたことが、大きな話題となった。
彼女は世界で13番目の金持ちといわれる、アブドッラー国王の甥にあたる、ワリード・ビン・タラール王子の妻の、アミーラ・タウイール姫だ。彼女は自分が訪問した外国では、どこでも運転した経験があることを語り、サウジアラビアの国内でも、友人家族を乗せて運転したいと、サウジアラビアのアルワタン新聞との、インタビューのなかで語っている。
以前にも、故ファイサル国王の娘ロルワ・ファイサル姫が、ワールド・エコノミック・フォーラムの会議で。女性に運転の自由を認めることを、求める発言をして、話題になったことがある。
この発言が今後、どのような変化を、サウジアラビアの国内で生み出すかは、今のところ不明だが、保守国家のサウジアラビアといえども、段階的には自由を拡大していかなければならない、ということであろう。今回のアミーラ・タウイール姫の発言は、そのことを推し進めるためのものではないのか。