イエメン政府が、アルカーイダ容疑者を、大量に釈放することを発表した。この理由は、すこぶる単純なものであると同時に、きわめて不安なイエメンの将来を、感じさせるものだ。
イエメン政府に対して、アルカーイダはイエメンを、アルカーイダのセンターにすると通告(警告)していた。そうなれば、イエメンの将来は、すこぶる危険なものになろう。周辺諸国との関係悪化、欧米からの敵視が始まるからだ。
イランなどとは違って、イエメンは小国であることから、軍事攻撃もしやすかろうし、湾岸諸国との関係も悪化し、経済援助を受けるのが、困難にもなろうというものだ。イエメンからは、多くの国民が湾岸諸国に、出稼ぎに出てもいるのだ。
今回のイエメン政府の、アルカーイダに対する対応は、アラビア湾や黄海での、ソマリアの海賊活動が活発化していることとも、関連するだろう。この海賊退治には、イエメンは諸外国の海軍への補給基地として、活発に利用されることが予測される。
そうなれば、アルカーイダにとっては、イエメンの港湾や外国の施設、大使館などは、最も攻撃しやすいターゲット、というこということになろう。
イエメン政府は最初に、112人の容疑者を釈放し、次いで50人を釈放し、最終的には、残りの容疑者のほとんども、釈放するのではないか。イエメン政府が、グアンタナモの受刑者の釈放についても、言及していることは、同国が強い圧力恫喝を、アルカーイダから受けていることの、証しではないか。
問題は、このアルカーイダ容疑者の釈放が、結果的に、イエメンをアルカーイダのセンターに、しないことに繋がるのか、あるいは、単にアルカーイダ容疑者の釈放にのみ、繋がるものであるのかだ。
イエメン政府が動いた裏には、イエメンの首都サナアにあるアメリカ大使館が、アルカーイダによって攻撃の的にされている、という情報がこのとこと真実味を持って、伝えられていたことにもよろう。
またイエメンでは、いまだに部族が強力な政治に対する、影響力を持っていることにも起因しよう。イエメン国籍のアルカーイダ容疑者は、すべてがイエメンのいずれかの部族に、属していることは当然であり、各部族長は自部族の容疑者の釈放を、政府に要求していたろう。
ちなみに、アルカーイダのリーダーである、ウササーマ・ビン・ラーデンの家族は、南イエメンの出身であり、ウサーマ・ビン・ラーデンはイエメン国内に、人脈と地の利を得ているであろう。今回の釈放者の多くは、イエメン出身の、アルカーイダ容疑者だった。