イラクで行われた地方選挙で、マリキー首相の党が大勝利を収めたようだ。選挙後には、予想通り開票に問題があったとし、再度票勘定をする地域も出てきたが、おおむねスムーズに投票と開票が、進められたということであろう。
今回の選挙の争点は、イラクが今後統一国家としていくのか、それとも連邦制国家になり、各地域がある種の自治権を持った、独立国の集合体のようになっていくのか、ということだった。
クルド地区で始まった、石油のある地域の分離独立の動きが、この選挙結果でひとまず抑え込まれた、ということであろう。そのことは、今後、イラクがアメリカ軍の大幅な削減と、そのための撤退後に分裂し、内戦になるという最悪のパターンに進む、可能性が低下したということであろう。
この選挙結果に対し、アブドルアジーズ・ハキームのグループは、これまでイラク南部の分離独立を、画策していただけに、相当不満であろう。したがって、選挙結果を受け、ハキーム・グループがイラク中央政府に対して、反旗を翻す可能性があった。
これを阻止する動きが、選挙前からあったのであろう。選挙結果を受け、いち早く、マリキー・グループとサドル・グループの連帯が発表され、ハキーム・グループの動きを、止めにかかっている。
イラクが分裂することは、イラクに触手を伸ばそうとする、イギリスのような、策略の天才的な国からすれば、好都合なのであろうが、世界の現状は、それをよしとしないのではないか。石油価格の高騰が、世界の金融や経済に、大きな打撃を与えた後だけに、大産油国であるイラク国内に、問題が起こることを、歓迎する国はあるまい。
権謀術数に優れた欧米諸国も、当分はイラクの安定化を図った方が、得策だと考えているのではないか。イラクのマリキー政権はこのところ、周辺諸国との間も、なるべく波を立てないようにと、ソフト外交を展開してきていた。
今後、ハキーム・グループがどう動くのか、興味のあるところだが、イランも特別に触手を伸ばして、イラク国内に問題を起こすことを、考えてはいまい。国際社会でのイランの立場が、現在の段階で微妙過ぎるからだ。