中央アジアの一国キルギスタンに、アメリカはアフガニスタン対応の輸送目的の、空軍基地を持っていた。この基地から、アフガニスタンに駐留する兵士に、食料や武器弾薬などが、空輸されていたのだ。
ところが、ここにきて、キルギスタン政府はこの空軍基地の使用延長を、取りやめることを決定した。アメリカの援助よりも、ロシアとの関係を、優先したのであろうか。
アメリカはイラクの制圧がほぼ成功し、軍の大半をアフガニスタンに移駐し、一気にアフガニスタンも解決しよう、と思っていたのであろうが、どうも流れは逆の方向に、向かっているようだ。
キルギスタンの非協力に加え、パキスタンからアフガニスタンに通じる、主要道路にかかる、橋が爆破された。この結果、パキスタンから運ばれていた軍事物資は、完全にストップすることになった。
そうなると、アフガニスタンに駐留するアメリカ軍は、食糧の補給も武器弾薬の補給も、滞ることになる。それでは、タリバン勢力に対する攻勢どころか、アメリカ軍基地の守備さえも、ままならなくなるのではないか。
加えて、ムンバイ事件以来、アメリカとパキスタンとの関係は、冷却の一途をたどっており、早急にパキスタン側が補給路の確保と、橋の修復をするとは思えない。それほどの技術も資金も、パキスタンにはない、という現実的な問題もある。
それでは、その橋をかける工事をアメリカの企業が行うのか、ということになれば、治安維持のうえから考えて、相当の費用がかかることが予測される。しかも、それは危険極まりない、作業ということにもなろう。
オバマ政権発足間もなく起こった、この二つのショッキングな出来事は、彼の前途を暗いものに、しているような気がする。アメリカはアフガニスタン作戦で、ほぼ完全に補給路を、断たれた形に、なってしまったのだから。
ただ、この劇的な変化が、これまで緊張していたイランとアメリカとの関係を、修復する方向に向かわせるのではないか、というかすかな希望を、抱かせてもくれる。アメリカは世界の現実の前に、そろそろ冒険を止めるべきなのかもしれない。そのアメリカの冒険主義に、日本は軽々に、加担すべきではあるまい。
自衛隊がアフガニスタンに、ヘリコプター持参で参戦することを、アメリカは強く希望しているが、あいまいな返事で先延ばしし、ついには、派兵しないのが、一番利口なのではないか。アフガニスタンではイギリスも ソビエトも、最終的は敗退している。アメリカもその例に漏れないのではないか、という懸念さえ浮かぶのだが。