先に、スイスのダボスで開催された、ワールド・エコノミック・フォーラムの席で、イスラエルのペレス大統領を前に、イスラエル非難を行った、トルコのエルドアン首相とギュル大統領は、トルコ国民となっている、ユダヤ人に対し、配慮の発言を行っている。
ワールド・エコノミック・フォーラムの後でも、エルドアン首相は彼の発言は、ガザ地区住民を虐殺した、イスラエル政府に向けられたものであって、ユダヤ人を非難したのではない、と語っていた。
しかし、トルコ国内では、エルドアン首相の発言が起爆剤となってか、反ユダヤの言動が、目立つようになっていた。そこで、ギュル大統領とエルドアン首相は,共に、「ユダヤ人を差別してはならない」と発言し、ユダヤ人の安全を守るように、警察や法律関係者に通達も下した。
加えて、二人はユダヤ人もトルコの国民であり、彼らの権利はトルコ人と平等であることを、強調している。それはトルコ国籍を持つユダヤ人の間に、「自分たちは異邦人として見られているのではないか?}という懸念が、広がったからだった。
トルコには現在、全人口7000万人に対し、23000人のユダヤ人がトルコ国民として居住している。これ以外にも、トルコにはドンメと呼ばれる、ユダヤ教からイスラム教に改宗した、ユダヤ人が居住している。このドンメについては、どの程度の人口なのか、明らかではない。
こうした事情が、トルコとイスラエルを、特別な関係にしてきたのであろうが、今回のエルドアン首相の発言が、この関係を危ういものにするのではないか、という不安が、トルコとイスラエル双方で、広がっているのであろう。
イスラエルのツビ・リブニ外相は、トルコに対し、イスラエルとの関係を尊重するよう求める、発言をしている。トルコにとってもイスラエルにとっても、双方の関係は極めて重要であることから、今回のギュル大統領とエルドアン首相の、ユダヤ人に対する配慮の発言が、あったものと思われる。