ガザ戦争を機会に、西岸地区でのハマース支持者の増加が、これまで何度となく報じられた。報道によれば、その割合は80パーセント弱にまで、達しているということだ。
この変化は、イスラエルにとってガザ戦争は、藪蛇だったということになろう。西岸地区は本来、マハムード・アッバース議長がリードする、ファタハの拠点であり、パレスチナ自治政府支配下では、アラファト議長の時代にもマハムード・アッバース議長の時代にも、住民が最も利益を享受してきていた場所だ。
したがって、ガザ地区を拠点とする、ハマースに対する支持者よりも、ファタハ支持者が絶対的に多かったのだ。しかし、今回のガザ戦争はガザ住民に対する同情もあり、西岸地区の住民の心を、ガザ地区住民と強く結び付け、そのガザ地区住民をリードする、ハマース支持に向かわせたということだ。
問題はこの結果、ガザ地区のハマースを壊滅することができなかったばかりではなく、西岸地区でも新たなハマース・メンバーを生み出し、しかも、増やしてしまい、ついには、イスラエルはハマース撲滅に、西岸地区に対する軍事攻撃をも、行わなければならない状態を、生み出してしまったということだ。
西岸地区にも軍事侵攻することになれば、イスラエルがこれまで堕落させることによって、完全にコントロール下に置くことに成功した、マハムード・アッバース率いる、パレスチナ自治政府との関係を、ご破算にしてしまう、ということになろう。
あるいは、イスラエルの傀儡となっている、非イスラム教徒(バハイ教徒)のマハムード・アッバース議長が、その座をパレスチナ人によって、追われることになる、可能性が高まるということだ。
こうしたジレンマからであろうか。イスラエルが西岸地区で、取り立てて騒ぐこともないような些事で、パレスチナ人を逮捕拘束している。しかし、そのことは、ますます西岸地区住民に対して「次は我々が攻撃される番だ」という恐怖心を広げ、反イスラエル感情を、強くすることになろう。
イスラエルの昨今の行動は、どうもイスラエル国民の強い被害者感情を、2月に選挙を控えた各政党が重く受け、過剰な対応をしているとしか思えない。その結果は、決してイスラエルの今後に、プラスになるとは思えないのだが。