将来できるであろうパレスチナ国家について、これまでガザ地区と西岸地区を、どう結び付けるかということ、問題となり、幾つもの考えが浮かんでは消えていった。そのなかには、ガザをエジプトに渡し、パレスチナ国家は西岸だけに限定する、という考えもあった。
日本の企業が検討した案には、ガザ地区と西岸地区を、モノレールと道路で結ぶというものがあった。これは、道路部分とモノレールとを、陸橋の上に設ける、というものだった。
イスラエル側にとって不都合なのは、ガザ地区と西岸地区を結ぶ、道路そのものには反対しないのだが、その道路からそれて、イスラエル領内に侵入され、テロ活動を展開されることだった。そうしたイスラエル側のニーズに合わせ、ノンストップ、途中下車なしのモノレール構想が、生まれたわけだ。
今回のバラク氏(労働党党首で首相候補)の地下トンネルは、その意味で全く問題あるまい。もちろん、イスラエルの陸地をパレスチナの道路のために、明け渡してやる必要が、なくなるのだ。しかも、地下トンネルなら、そこから這い出しての、テロ活動はできないことにもなる。安全と利益を両方満たす、素晴らしい案といえよう。
ただこのトンネルは、総延長48キロにも及び、工費は20-30億ドルと見積もられていることから、決して安い買い物ではなかろう。しかし、この地下トンネルが造られるとすれば、世界中の国々からの寄付が集められ、資金調達に苦しむことはあるまい。
そして、このプロジェクトが推進されれば、イスラエルとパレスチナ双方にとって、経済技術的なプラスとなろう。加えて、日本企業のトンネル技術が採用されれば、日本にとってもメリットがあろうというものだ。