国家情報長官の二つのメッセージ

2009年2月15日

  アメリカのオバマ大統領によって指名された、国家情報庁の新長官デニス・ブレア氏は、イランとイスラエルとの間で、今年中に戦争が起きる可能性が非常に高い、という予測を語ったということだ。

 イランがウラニュームの濃縮で、今年中にしかるべき段階に到達することを、イスラエルは強い懸念を持って、受け止めていることがその理由だ。

イスラエルは核施設に対する攻撃をしなければ、イランが核兵器を持つに到る道程を、阻止することは出来ないと判断しており、イランを攻撃する選択肢は、常に机上にあるということのようだ。

 デニス・ブレア長官は、同時にイランは核兵器を開発していない、とも語っている。そうだとすれば、イスラエルによるイランの核施設に対する攻撃意思は、アメリカによって、押さえ込まれる可能性が高い、ということではないか。

 数日前に、オバマ大統領はイランの核兵器開発に対して、警告を発しているが、それは核兵器を開発することを許さないぞ、ということであろう。そして、イランが核兵器の開発に向かわないのであれば、応分の協力関係を構築して行く、という意思表示であると思われる。

 今回の長官の発言は、イスラエルがイランの核兵器開発に、異常なまでに不安を抱いていることを、イラン側に明確に伝えると同時に、イランに核兵器開発の意思が、これまでのところ無かったということを、アメリカは分かっているということだ。

 アメリカはこの長官の発言により、イスラエルとイラン双方に、メッセージを送ったのではないか。イスラエルには、イランが核兵器の開発をしていないと、アメリカは判断している。したがって、勝手なイラン攻撃は許さない。もし、イスラエルがイラン攻撃を、単独で始めてもアメリカは協力しない、というメッセージであろう。

 他方、イランに対しては、イスラエルが証拠不十分で、イランを攻撃することは認めないが、イランはこれまで同様に、今後も核兵器を開発しようと考えるな。そうすれば、アメリカはイランとの関係を、改善する考えがある、ということであろう。

 アメリカが止めても、イスラエルがイランを攻撃するような事態になれば、それはイスラエルにとって、大きなリスクを覚悟すべきだ、ということではないか。イスラエルの次期政権が、自制心のある行動を、選択して行くことを望む。イスラエルによるイラン攻撃は、誰よりもイスラエルを、危険にさらすことになるのだから。