1月27日の火曜日、国連ではホロコースト記念のセレモニーが開催された。しかし、今回は国連スタッフの中で、欠席する者が多かったと、エルサレム・ポストは伝えている。
最近になって、国連の枢要な地位を占める人たちが、いわゆる第三世界からの人たちによって、占められていることが、その裏にはあるのではないか。同時に、ガザ戦争が世界に与えた、ショックの影響も否定できまい。
世界の多くの指導者たちが、ガザで起こったことはホロコースト、虐殺以外の何物でもないと主張したが、それに心情的に賛同する向きは、少なくなかったのであろう。
同じ時期に、エルサレム・ポストが伝えたもう一つのニュースは、イスラエルのチーフ・ラビ(ユダヤ教の最高権威者)が、キリスト教の総本山であるバチカンとの、絶縁を宣言したことだ。
ドイツで起こったホロコーストも、ロシアでも起こったポグロムも、いずれもキリスト教徒による、ユダヤ教徒殺害だった。もちろん、ドイツが行ったホロコーストには、他のヨーロッパ諸国も、間接的に協力していたのだ、と言われている。
つまり、21世紀を迎えたいま、20世紀に大問題となった、ユダヤ教徒に対するキリスト教徒の対応に、大きな変化が出てきたということではないか。
20世紀の後半は、ユダヤ教徒虐殺をめぐり、キリスト教徒は発言を控えていたのだが、ガザ戦争を機に、一気にその暗い過去を帳げしにしよう、と思っているのかもしれない。
バチカンに対する、イスラエルのチーフ・ラビの決別宣言は、バチカンの高官がガザで起こったことを、ホロコースト以上と評したことに、始まったのであろう。
確かに、ガザで起こった惨劇は、人類に対する挑戦であり、犯罪であったと評することができよう。1000人をはるかに超える住民が、逃げ場のない中で攻撃を受けて殺されたのだ。負傷者の数も5000人を上回るのだから。
しかし、今回のガザ戦争を冷静に見ていると、最大の被害をこうむったのは、ガザ地区に居住するパレスチナ人住民よりも、イスラエル国民であり、世界に散らばる、ユダヤ人ではなかったのか。
世界の人々は、イスラエル政府だけではなく、イスラエル国民と世界中に居住する、ユダヤ人に厳しい目を向けるようになったからだ。突発的な犯罪や計画的な犯行が、今後、世界中でユダヤ人に対して、行われる危険性は高まったと言えよう。
その場合には、イスラエルが所有する最高度に発達した兵器も、ユダヤ人を守るためには、何の役にも立つまい。憎しみが国境を超え、世界中に広まったとき、ユダヤ人は世界を敵にしなければ、ならないということだ。
イスラエル国内では、今回のガザ戦争以来、国民の間で強硬論が、広がっていると伝えられている。軍に所属するラビ(宗教指導者)は、ガザでの戦争では、情け容赦はいらない、と兵士たちに語ったと伝えられている。
それは、イスラエル国民がある種の、パニック状態に陥っていることを、示しているのではないか。政治家や軍人たちも、それぞれに強硬論を口にし、対立を深めている。イスラエルにとって現在最大の脅威は、ガザ地区のパレスチナ人でも、世界中でユダヤ人を狙うかもしれない、テロリストの存在でもない。イスラエル自身が自ら創り出した、ユダヤ人とイスラエル国民内部の、意見対立と分裂ではないのか。