昨年の12月から、今年の1月にかけて行われたガザ戦争の結果、パレスチナのハマース組織は、その存在感を大きくしている。
一説によれば、ハマースが拠点としている、ガザ地区だけではなく、ハマースに対する支持は、西岸地区のパレスチナ人住民の間でも拡大し、現段階では80パーセント近い、支持を集めているということだ。
そのことは、ハマースと対立関係にある、マハムード・アッバース議長の率いるファタハと、それを中心に結成されている、パレスチナ自治政府に対する支持が、大幅に低下したということだ。
ガザでの戦争が始まって間もなく、西岸地区のパレスチナ住民は、ハマースとガザの住民を支持するデモを行ったが、いずれもパレスチナ警察による、暴力的対応(警棒で殴打するなど)によって、阻止されている。それでも、ガザ住民の死傷者が増えるに従い、西岸住民の間の、ハマースに対する支持は増加していった。
1月19日ごろから、当面の停戦が、ハマースとイスラエル側の間で、自然成立しているが、その停戦は正式な合意が、両者間で交わされているというものではない。
ハマース側が秘密トンネルの再建を、進めていることから、停戦はもろいものであろう。すでに、イスラエルによる空爆や、ガザへの越境侵攻、銃撃戦が部分的に、起こっているということだ。
さて、ほぼ20日間に及んだ、イスラエルによるハマース潰しと、秘密トンネル破壊、ロケット攻撃阻止のための、軍事作戦が沈静化した今、ハマースはそれにもかかわらず、生き残っている。
このことで、シリアはレバノンのヘズブラ同様に、ハマースがイスラエルに勝利した、と賞賛している。革新派のシリアにしてみれば当然であろうし、シリアのこの立場は、イランにとっても同じであろう。
しかし、アラブ内のヘズブラやハマースのような、革新派勢力と敵対関係にあるエジプトにとっては、極めて不愉快な状況であると言えよう。そうはいっても、ハマースが生き残ったことは事実であり、大半のパレスチナ人が、ハマースを支持するようになったいま、アラブ諸国も欧米も、今後ハマースにどう対応していくべきかを、考える時期が来たのではないか。
トルコ政府は、正式にハマースを認め、中東和平交渉の当事者の一員に、加えるべきだと主張し始めている。同時にフランス政府も、ハマースとのコンタクトを始めている。
ガザ住民に対する巨額の援助が決まると、ファタハを中心とするパレスチナ政府の要人たちは、一斉にペーパー・カンパニーを設立し、援助金の詐取の用意を始めている。そのことはイスラエルのエルルサレム・ポスト紙が、伝えている事実だ。
そうであればなおさらのこと、汚職を拒否するハマースに対する対応を、日本も検討すべきではないのか。そうでなければ、日本国民から集めた血税は、パレスチナ政府幹部の懐に入るだけであって、ガザの悲惨な状況にある住民には、ほんの一部しか届かないのだから。
ハマースは援助金や援助物資を、取り扱う独自の組織を結成するととを、提案してもいるのだ。