ガザ戦争と各国の収支

2009年1月27日

 ガザでの戦争がどうやら落ち着いたようだが、いったい中東の各国は、今回の戦争をめぐり、どのような立場を展開し、結果的にどうなったのであろうか。

 ガザ戦争が始まった当初は、ハマース側の被害が報告されるたびに、エジプトやサウジアラビアは非難の対象となり、ハマースを支持する、シリアやイランは優位に立った。

 しかし、ハマースに主導されるガザの住民の被害が、一定のレベルに達し始めると、状況は変わったようだ。ハマースに対するアラブ大衆の支持が、低下したわけではなかったが、同様に、シリア・イランに対する同調の度合いが、低下したわけでもなかったが、もう戦争を止めなければ、という意識が働いたのであろうか。

 次いで、エジプトに対する、ガザのゲートを解放しろという要求と、エジプトのムバーラク大統領に対する、非難がアラブ世界で起こった。ムバーラク大統領にしてみれば、自国の国内状況を維持する上では、容易にガザのゲートを開くわけには、行かなかったのだ。

 しかも、もし開いたとしても、ゲートはエジプト側に接する場所と、その先にパレスチナの管理するゲートがあり、エジプト側が開いても、スムーズに人や援助物資を送れるという、状況にはなかったのだ。

 もちろん、パレスチナ側のゲートは、イスラエルの同意無しには、開けなかったということもある。また、援助物資の搬入や負傷者の搬出には、誰がその責任を負うのか、という問題もあった。

 エジプトのムバーラク大統領が、アラブ大衆とマスコミの非難の槍玉に上がったのは、エジプトが唯一、イスラエルとの戦争を行える、軍事力を保持しているという幻想にもよろう。実際には、これだけ軍事技術が向上し、兵器が発達したいま、イスラエルと互角に戦える、アラブの国はひとつもない。

 イスラエル同様に、アメリカから兵器の供給を受けているエジプトは、そのことを十分に分かっているということだ。

 エジプトにとって、もうひとつの問題は、ハマースと関係が芳しくなかったこともある。このため、エジプトの進めたハマースとファタハとの仲介努力は、ことごとく失敗してきていた。

 つまり、ハマースの説得が出来ない状態では、イスラエルとハマースの停戦の仲介が、進められなかったということだ。結果的に、エジプトはアラブ大衆の非難を、まともに受けながら、何の手立ても出来ないでいた。

 そうしたなかで、トルコが登場した。トルコはエジプトとの間に、良好な関係を維持しているばかりではなく、イスラエルとも、シリアとも、イランとも良好な関係を維持している。

 加えて、トルコはパレスチナの二大勢力である、ハマースとの関係も、ファタハとの関係も維持していたため、エジプトがハマースとの交渉を進めるに当たり、ハマース側からトルコの参加を要請されるという幸運に恵まれた。

 結果は、イラン、シリア、エジプトといった国々の努力の上に、トルコは漁夫の利を得ることが出来た形になった。この状況は、今後、エジプトとトルコの関係を強化して行くであろうし、そのことから生まれてくるであろう、大きな政治的変化を、中東地域に生み出すかもしれない。