ガザの惨状は世界中で話題になり、イスラエルに対する非難の声が、各地で高まっている。しかし、イスラエルは世界から非難されても、全くひるむ様子を見せていない。
ガザの抵抗が続き、パレスチナ人のなかに死傷者が増加して行くなかで、イスラエルもガザ対応に、てこずり始めているのではないか。そうしたイスラエル内の不安とジレンマが、次第に「臭いの元」に対する危機感を、増大させているようだ。
イスラエルやアメリカのなかの、イスラエル支持の人士の間から、ハマースを支援しているのはイランであり、イランが武器や資金をハマースに与えているから、ハマースは継戦できているのだ、という論法が出始めている。
昨年半ばに、オルメルト首相はイラン攻撃に使う、バンカー・バスターの供与を、アメリカのブッシュ大統領に求めたことがある。これに対し、アメリカ軍の幹部が、それはあまりにも危険なことでやるべきではない、とブッシュ大統領を抑えたと伝えられている。
ガザがこれほど激しい戦いになると、イスラエル国内ではイラン首班説が飛び出しても、不思議ではあるまい。しかも、そのイランはパキスタン、インド、イスラエルという、核兵器保有国に囲まれているのだから、自国も核兵器を持つべきだと考えるだろう、という意見が出てきても不思議はない。
だから、イランは秘密裏に、核兵器の開発に向かっているのだ、という論法が成立し、それを次第に信じ込む方向に、イスラエル国民は向かっているのではないか。
ガザを早期に停戦に導く事も大事だが、同時にイランに対して、イスラエルが過度の不信感と脅威を抱くことを、止めなければならないのではないか。中東で起こっていることは、上下左右、前後に連結しているのだから、そう簡単にひとつずつ解決、というわけにはいかないのだ。ガザが早期に解決すれば、返す刀でイランを、という欲求がイスラエルのなかから、出てくる危険があることを考慮すべきだろう。