イスラエルによるガザ侵攻は、世界中の国々から悪評を買ったようだ。国連ではイギリスまでもが非難の側に回り、アメリカがかろうじて棄権し、イスラエルを擁護するということになった。
イスラエルが進めたガザ侵攻は、あまりにも完璧であり、ガザを完全に封鎖した状態で、これでもかというほどまでに空爆を続け、ガザの住民が茫然自失の状態になってから、陸軍部隊を投入するというものであった。
このため、ガザでは建物が広範にわたって破壊され、住民は食料も医薬品もない状態に置かれている。幼児までもが多数犠牲になり、飢餓の状態に置かれているのだ。
極め付きは、国連の援助車両までもが、イスラエル軍の攻撃対象になったことだ。これでは、イスラエルの友好国でさえ、イスラエルを擁護するのは、困難であろう。
こうした惨状を、目の当たりにした中東諸国は、こぞってイスラエル非難の感情をあらわにし、大規模なデモが各国で起こっている。例外は、エジプトとパレスチナの西岸地区であろうか。
エジプトのムバーラク大統領は、自国内の反政府勢力の、勢いが増すことを恐れ、ガザのゲートを閉ざし、デモに弾圧を加え許可していない。西岸地区はマハムード・アッバース議長が、同様にハマース支持が高まることをおそれ、デモを暴力で鎮圧し禁止している。
この両者のデモ禁止措置は、両者の弱さを表しているのでもあろう。早晩、ムバーラク大統領とマハムード・アッバース議長は、ツケを払わせられることになるのではない
イスラエルのガザ侵攻は、この二人の友人を窮地に追い込んだばかりではない。中東の他の二人(国家)も、敵に回してしまいそうな状況にある。それはイスラエルと外交関係を持つ、数少ないアラブの国ヨルダンだ。
人口の80パーセントが、パレスチナ人で構成されているヨルダンでは、まさに、大規模なデモが繰り返されている。デモの規模は6万人にまで達し、彼らは「アラブの土地にユダヤの大使館は置くな」というシュプレヒコールを、繰り返しているのだ。
この国民の怒りを抑え込むことは、かえって危険だというのが、ヨルダン政府の賢い判断であろうか。ヨルダンの首相は「ヨルダンはイスラエルとの外交関係を再考する必要があろう」と語っている。
もう一つの、イスラエルとごく親しい関係にあるトルコも、ガザ侵攻前のイスラエル政府要人のトルコ訪問で、深く傷つけられたようだ。ガザ侵攻前に、イスラエルからはオルメルト首相とバラク国防相が、トルコを訪問しているのだ。このことは、内外にエルドアン首相は事前に、イスラエル軍のガザ侵攻を知らせられていた、という誤解を生みだしたのだ。
このため、トルコなかでもエルドアン首相は、イスラエルのガザ侵攻に対し、ことのほか厳しい対応を取るようになった。トルコは今後、イスラエルではなく、ハマースやヘズブラ、イランを支持する側に回るのではないか、という懸念すら生まれているのだ。
そこまではいかないとしても、トルコの今回のイスラエルに対する怒りは、尋常ではないことから、今後、ガザ侵攻の後に、イスラエルがトルコとの関係修復を図るとしても、相当の時間を要することになるのではないか。イスラエルはガザ侵攻で、2人のアラブの友人を窮地に追い込み、二つの友好国家を敵に回してしまったのではないか。