ガザ地区ではイスラエル軍によって、完全に包囲されたパレスチナ人たちが、まさに虐殺され続けている。この虐殺に対し世界は非難の声をあげ、世界各地で大規模な抗議デモが行われている。
フランスのパリで行われた抗議デモでは、アラブ各国出身者たちが一丸となってデモを行ったことから「パリでアラブが連帯」という、皮肉交じりの記事が紹介されたほどだ。
抗議デモは東南アジアのインドネシアでも、南米の各国でも行われている。もちろん国連でもガザ地区に対する、イスラエル軍の蛮行は主要なテーマとして持ち上げられ、激論が交わされている。
こう書くと、あたかもアラブが一丸となって、ガザ地区のパレスチナ人の抵抗闘争を、支援しているかのように思われるのだが、実態はそうではない。アラブ各国は支援の声は挙げるものの、実際には国民のガザ住民に対する支持デモを、厳しく規制している国が多いのだ。
ヨルダンでは6万人規模のデモがあり、トルコでは100万人規模のデモがあったと伝えられているが、肝心のエジプトでは政府が規制し、大規模なデモは潰されている。
それどころか、意外なことにガザ地区で同胞が虐殺されているなかで、西岸地区のパレスチナ人の間で、これといった規模のデモが行われていないのだ。一見、西岸地区のパレスチナ人たちは、ガザ地区の惨劇を無視しているような光景だ。
この異常ともいえる状況は、実はパレスチナ自治政府の、弾圧によるものであるという報告が、現地にいるジャーナリストから伝えられている。パレスチナ自治政府が置かれている、西岸地区のラマッラ市では、100人程度の規模のデモが、行われたにすぎない。それは、パレスチナ自治政府が軍隊や警察を使って弾圧しているために、その程度で収まっているのだということのようだ。
デモが大規模化すればするほど、パレスチナ自治政府やファタハ支持ではなく、ハマース支持の様相を濃くするからだ。西岸地区では、ハマースの旗を掲げることも、ハマース支持のプラカードを掲げることも、ハマース支持のスローガンを叫ぶことすらも、許されていないのだ。
こうしたパレスチナ自治政府の、厳しい規制の下で、西岸のパレスチナ人たちは「俺たちは貧しすぎる」「俺たちには何もできない」「住民はそれよりもその日口にするパンを求めているのだ」ということのようだ。
しかし、そうした状況とは別に、パレスチナ自治政府、マハムード・アッバース議長、ファタハ支持が激減し、ハマースに対する支持が激増する、という現象が起こってもいる。ガザ地区で展開されている惨劇は、パレスチナ自治政府とアラブ諸国に、権力の交替や、弱体化を生むのであろう。