悲しいなれという麻酔薬

2008年12月29日

 

 イスラエル政府が徹底的にやる、まだ攻撃を継続すると言っている以上、ガザの惨劇はまだ終わったわけではないが、パレスチナのガザに対するイスラエルの攻撃は、300人近い死者を出している。アルジャズイーラ・テレビを見ていると、アラブの大衆による大規模デモが、全アラブから伝えられ、大衆は怒りに燃えている。

 しかし、今回のガザ攻撃をめぐる緊急アラブ・サミットの開催は遅れ、外相会議も遅れそうだ。リビアのカダフィ大佐はすでに、緊急アラブ・サミットには出る気がないむねの、発言をしている。彼によれば「どうせアラブの首脳が集まったって、イスラエル非難が行われるだけで、実質的な行動は決められないだろう。」ということのようだ。

 アラブ諸国のこうした態度に、業を煮やした大衆は、ガザのゲートを閉鎖したままで、イスラエル軍にパレスチナ人を攻撃させたとして、エジプト大使館に対する抗議デモを行っている。

 エジプト政府がイスラエルに対する、軍事攻撃を決断しない限り、どのアラブの国も、軍事行動を起こすことはありえない。つまり、エジプト大使館に対する抗議デモは、エジプト政府に立ち上がってほしいということなのだ。

 しかし、エジプトもイスラエルと戦争を、起こすだけの決断が出来ないのではないか。アメリカはすでにお伝えしたように、ガザからのハマースをはじめとした、パレスチナ各組織による、イスラエルに対するミサイル攻撃が続いている以上、イスラエルには反撃の権利がある。この戦闘を終わらせるためには、ハマースの側が攻撃をやめることが先決だ、という立場を発表している。ヨーロッパ諸国も停戦を呼びかけるだけで、それ以上の行動をいまだ取っていない。

 ハマースは多分、徹底抗戦するつもりだろう。ハマースの首相イスマイル・ハニヤが言った「死を恐れない」という発言は、本音であろう。この戦いを途中でやめたのでは、パレスチナ問題は元の木阿弥に、なってしまうからだ。

 しかし、アラブもヨーロッパもアメリカも、具体的な行動を起こしていないことから、ハマースは相当の犠牲者が出ることを覚悟しなければならないだろう。ここで気になるのは、レバノンのヘズブラがどう決断するかだ。

 ヘズブラはハマースとは比べようのない本格的なミサイルやその他の兵器を、所有している。そのヘズブラの兵器が火を噴くとき、アラブ諸国は立ち上がらざるを、得なくなるのではないか。

 ハマースやヘズブラが何処まで頑張って、アラブ諸国政府に立ち上がらせることが出来るかが、今回の重要なポイントであろうか。2006年にはレバノン戦争で、多数の人が殺され、長期にわたるイラク戦争では、毎日のように何十人という人たちが、死亡している。

 ガザの犠牲者の数は、それらに比べればまだ少ない。アラブの大衆が騒ぐのも、新しい出来事だからであろうか。イラクの犠牲者にはアラブは慣れっこになり、ほとんど関心を払わなくなった。

 慣れは人の死をも、通常の出来ごとの様にしか、受け止めなくさせてしまうようだ。そう言う私も、イラクでの犠牲者の記事を見ても、詳しくニュースを読む気になれなくなっているというのが本音だ。

 アラブの人たちにも、日本の人たちにも、世界の人たちにも、ガザの状況を時間の経過の中で、影の薄い関心のない、出来事にはしてほしくない。あまりにも悲しい、出来事ではないか。