世界最大の石油埋蔵量を誇る、サウジアラビアはこれまで、スイング・プロデユーサーとして、石油価格の安定化に大きく寄与してきている。サウジアラビアは又、エジプトがサダト大統領の時代に、イスラエルと和平を交わしたことから、アラブ世界の盟主の役も、果たしてきていた。
そのサウジアラビアは、実は1975年の第一次石油ショック後から、密かに核兵器の入手を、検討してきていたと言われている。持てる巨額の富を持ってすれば、あらゆることが可能なのが世の常だが、この核兵器ばかりは、そうならなかったようだ。
サウジアラビアは早い段階から、自国内、自国民の手で核兵器を造ることを
断念し、パキスタンの核兵器開発に資金提供を、行ってきたと言われている。
ここにきて、一旦は死蔵されていた、サウジアラビアの核兵器開発の話題が、再度マスコミの間で取り上げられ始めている。それはなぜなのか。
アメリカのウオール・ストリート・ジャーナル紙は、サウジアラビアがパキスタンの援助で、秘密の核開発を進めている、と言うニュースを伝えた。
これに先立ち、2003年には、イギリスのガーデアン紙が、同様の内容の記事を掲載しているし、2006年には、イギリスのグローバル・ビジネスマガジンが、同様の趣旨の記事を掲載している。
イギリスのMI-6(対外情報機関)は、サウジアラビアが既に、しかるべき核の技術レベルに達しており、核クラブに加盟する資格を持っている。いつ参加するかはサウジアラビアの意向次第だ。」とまで断言している。
サウジアラビアが核兵器の入手に長期間にわたって努力してきたと言うニュースはいまどのような意味をもって受け止められるのだろうか。そもそもこのニュースはガーデアンやウオール・ストリート・ジャーナル紙で伝えられたわけだが、今このニュースを蒸し返したのは、イランのプレス・テレビだ。
そのことから考えると、イランは中東地域にあって、核開発を積極的に進めたいと思っている、唯一の国家でない、イランとは異なり、サウジアラビアには、明確な核兵器開発の意向がある、ということを、欧米と世界に伝えたいのではないか。
そのことによって、イランへの圧力を少しでも緩和したい、あるいはアラブ諸国に対し、核開発の権利を主張する、イランの動きに賛同させたい、ということではないか。
他方、アメリカやイギリスのマスコミが、サウジアラビアの秘密の意図を公表することにより、サウジアラビアに対し、「核兵器の開発などやるな。」という警告を発しているのではないか。