不安の域を超えたガザとイスラエルの緊張関係

2008年12月24日

 

 ガザのハマースとイスラエルとの緊張状態が、どうやら不安のレベルをはるかに超え、現実のものとなりつつあるのではないか。

 イスラエルでは、ガザのハマース体制を打倒すべきだと主張する、政府高官が増えてきている。

 これまでは、停戦がほぼ守られてきていたが、それでもガザからのミサイル攻撃は、断続的に続けられていた。そのミサイル攻撃だが、次第にミサイルの飛距離が伸び、イスラエルの南部都市に届くようになってきたことが、イスラエル側の不安を、大きくしてきたのであろう。

 加えて、人質になっているイスラエル兵の釈放が、いまだになされていないことも、ハマースに対する不審と、怒りが高まった原因と思われる。これまで、何度となく交渉が試みられたが、ハマース側はパレスチナ人の受刑者の、大量釈放をその交換条件としてきていたために、成立することがなかった。

 イスラエル側は、ハマース傘下の武闘派グループが、次第にミサイルばかりではなく、各種の武器を確保し、本格的な戦闘にも対応できる、レベルに達してきているとも、判断しているようだ。

 このため、ガザに本格的に侵攻し、ハマース体制を打倒すべきだという考え方が、ほぼイスラエル閣僚の間の、統一したした見解になっている。問題は、その侵攻のタイミングを何時にするか、だけではないだろうか。

 イスラエル側が、こうまでも緊張状態になってくると、ハマース憎しのマハムード・アッバース議長も、放置しておくわけには、行かなくなったのであろう。彼はロシアを訪問し、中東和平に関与してもらうよう依頼した。

 エジプトのムバーラク大統領も同様に、イスラエルの外相ツビ・リブニ女史を招き、何とか緊張状態を緩和したいと努力している。

 ガザにイスラエルが軍事侵攻し、ハマースと本格的な戦闘を展開することになれば、レバノンのヘズブラも呼応して、戦闘を開始する危険性は非常に高い。すでに、レバノン国内ではガザの住民に対する、連帯のデモが大規模に、展開されてもいるのだ。

 そうなれば、望むと望まずとにかかわらず、西岸地区のパレスチナ人も、戦闘を開始する危険性がある。そうなればシリアやエジプトも放置できなくなり、大規模な戦争に拡大する可能性が高い。

 イランもその場合には、何らかの行動を起こすだろう。そうなれば、アラブ諸国の多くが動き出し、第5次中東戦争に発展するかもしれない。その場合の危険性とリスクを、日本も覚悟しておく必要があろう。