イスラエルはパレスチのガザ地区を支配する、ハマースとの間で停戦協定を結んでいた。しかし、その協定は12月19日をもって、期限切れとなる。
イスラエルはハマースとの間に、停戦期限の延長を、秘密裏に交渉していたようだが、これをハマース側が頑なに拒否し、延長交渉は失敗に終わった。
ハマース側は長期間にわたる、エジプトへのゲイトの閉鎖と、それによる実質的経済封鎖に苦しんできたし、多くのガザ住民がイスラエルの刑務所に、収監されているということもあり、とても停戦延長にこたえる、雰囲気ではなかったのであろう。
加えて、ハマースはイスラエルとの間に緊張を高め、ガザの住民の生活がより苦しくなれば、アラブ諸国は放置できなくなり、動き出すという期待感があってのことかもしれない。
他方、イスラエルは今回の停戦延長が切れる前の段階から、ガザからのミサイル攻撃が増しており、しかも、ミサイルの飛距離が伸びていることから、ガザへの本格的な攻撃を、せざるを得ない状況になってきている。
比較的穏健派といわれるツビ・リブニ外相も、ガザに対する今までのような穏健な対応では、だめだと考えるようになってきており、ガザを支配するハマースを、排除すべきだと主張し始めている。
どうやら、イスラエルはガザへの本格的な、軍事進攻を決断するのではないか。しかし、ハマース側もイスラエル軍に対し、徹底抗戦を覚悟していると語り、戦闘はパレスチナ側もさることながら、イスラエル軍側にもしかるべき死傷者を、出すことを覚悟しなければなるまい。
もう一つの懸念は、イスラエルがレバノンに再度軍事侵攻する可能性が、高まっていることだ。イスラエル側は今度の軍事侵攻で、レバノン南部にあるリターニ川までを、占領するつもりのようだ。その裏には、シリアとの和平交渉で、イスラエルがゴラン高原の返還を、真剣に考え始めていることを、裏付けているのではないか。述べるまでもなく、ゴラン高原は貴重な水源であり、それをイスラエルが手放すということは、他の水源を確保する必要があるからだ。
しかし、この場合も戦闘は決して容易ではあるまい。レバノン南部に展開しているヘズブラは、2006年のレバノン戦争時の、3倍の装備をしたと言われているし、今回は前回よりも、飛距離の長いミサイルを大量に入手している。
戦争となれば、へズブラのミサイル攻撃は、前回のようにイスラエル北部に限られたものではなく、少なくともイスラエル中部までもがヘズブラのミサイル攻撃大衆地域に含まれることにあろう。それを覚悟でイスラエルは、二つの戦端を開くと言うのだろうか。
今回の場合、イスラエル側が一つの先端だけに限定しようとしても、ハマースとヘズブラが連携して、戦端を同時に開く可能性は、非常に高いということを、イスラエルは覚悟しなければならないのではないか。