イスラエル政府にとって、バラク・オバマ次期大統領が何を考えているかが、最近の最も関心の高いテーマであろう。
もし、バラク・オバマ氏が大統領に就任したのちに、イスラエルとパレスチナとの、いわゆる中東和平問題を最優先することになれば、イスラエルにとっては非常に厳しいことになろう。
しかし、もし、オバマ氏が中東和平よりも、イラン対応に重点を置けば、イスラエルは猶予の時間が、与えられるということだ。イランの核開発問題は、アメリカにとっても、決して簡単な問題ではなかろう。
そこで、誰が中東担当に就任するかが、イスラエルの関心となっている。もし、デニス・ロス氏が中東担当になれば、彼は中東和平よりも、イランの核問題に焦点を当てるだろう、とイスラエルは予測している。
しかも、デニス・ロス氏はイランに対して、強硬な対応を選択することを、イスラエルは予測している。そうであれば、イスラエルはイランに対する軍事攻撃を、アメリカの許可のもとに、あるいは協力のもとに行うことができる、ということであろう。
しかし、もう一つの予測のファクターには、ヒラリー・クリントン女史が何を優先して、アメリカの中東外交を展開するかだ。彼女はベテランであると同時に、彼女なりの意見を持っている。したがって、バラク・オバマ氏はヒラリー・クリントン女史の意向を、無視するわけにはいくまい。
ヒラリー・クリントン女史にしろ、デニス・ロス氏にしろ、オバマ氏が大統領に就任して、最初に優先するであろう問題は、アメリカ国内経済の改善であり、外交ではイラク問題、アフガニスタン問題、そしてイランで問題ではないかと思われている。
そうであるとすれば、中東和平問題、つまりイスラエルとパレスチナ問題は、当分のあいだ放置されることになる、ということだ。それを裏付けるかのように、アメリカの国務省の高官は、パレスチナの状況が安定化し、改善の方向に向かっていると発言している。
しかし、現実には、ガザは飢餓状況に近づいており、西岸地区ではマハムード・アッバース議長の政治姿勢に、批判が強まっていることも事実だ。もし、今の時期にパレスチナ議会選挙が行われ、自治政府議長選挙が行われれば、マハムード・アッバース氏が敗北する、という予測も出ているほどだ。
バラク・オバマ次期大統領が、何を外交面での最重要課題とするかで、パレスチナの将来は、極めて厳しい状況になっていくということが、予想できるのではないか。