最近イスラエル国内では、穏健派のカデマ党党首ツビ・リブニ女史も、右派のリクード党のネタニヤフ党首も、どうも納得のいかない刺激的な発言をしている。
ツビ・リブニ女史はパレスチナ国家が設立された後は、イスラエル国内に居住しているパレスチナ系イスラエル人を、パレスチナ国家に追放すると言い出した。
ネタニヤフ氏はシリアとの和平交渉を、する意思があることを伝えると同時に、しかし「ゴラン高原は手放さない」と言っている。
ツビ・リブニ女史の発言は、衝撃的な内容といえよう。これまでイスラエルは民主国家として、イスラエルの国民となっているパレスチナ人に対しても、ユダヤ人国民と何等変わらない、平等な対応をしてきていると豪語してきていた。
それをパレスチナ国家が出来たからといって、強引にイスラエル国籍のパレスチナ人を追放するということは、国際社会が許さないのではないか。もちろん、ツビ・リブニ女史がそうした発言をするに至るには、これまでの経緯があってのことであろう。
イスラエル国籍を有するパレスチナ人たちが、反イスラエルの活動を展開し続けてきているからだ。数ヶ月前にアッカで起こった暴動も、ツビ・リブニ女史に最終的な解決策は、パレスチナ国家の設立を許す代わりに、全てのパレスチナ人をイスラエルから追放することだ、という結論に到達したということであろう。
ネタニヤフ氏のシリアとの和平に関する発言も、どうも何を意味しているのかわからない。シリアがイスラエルとの和平を進めかねている最大の原因は、ゴラン高原の返還がありうるのか否か問いう点だ。
1967年に起こった第三次中東戦争で、イスラエルに占領されたゴラン高原の奪還を、、これまでシリアは国家の名誉にかかわる問題として、ゴラン高原の奪還を悲願としてきているのだ。
その「ゴラン高原の返還はありえない」とするネタニヤフ氏の発言は、取りようによっては、イスラエルにはシリアと和平を進める意思が、全く無いということになろう。イスラエルにとっては、ゴラン高原は貴重な水源であり、最も重要な地域となっている。
しかし、これはネタニヤフ氏一流のブラフかもしれない。それはイスラエル国内では、ゴラン高原在住の入植者たちと政府との間で、ゴラン高原の入植地からの撤退に関し、保証金の交渉が行われている、という情報があるからだ。場合によっては突然、イスラエルはシリアに対し、ゴランを返還するという可能性もあるということだ。
いずれにしろ、ツビ・リブニ女史にしろ、ネタニヤフ氏にしろ、発言内容がショッキングであることに変わりはない。そうした発言が両者の口から出て来るということは、イスラエル国民がそれを求めているということであろう。つまり、刺激の強い言葉を求めているということであろう。
それはイスラエル国民が抱いている、混乱の継続する現状に対する怒りと、将来に対する不安がさせるのではないか。