平和への兆しか、新たな動き

2008年12月12日

 アメリカのオバマ次期大統領は、イランを中心にした中東諸国からの、イスラエルに対する核攻撃の危険を避けるため、イスラエルに対しアメリカの核の傘を、提供する意志のあることを発表した。

 このことは、換言すればイランがたとえ、核兵器を所有するに至っても、イスラエルはアメリカの核によって守られているので、イランがイスラエル攻撃を実行した場合、イラン側は壊滅的な被害を受けることになる、ということを意味しているのではないか。

 つまり、オバマ次期大統領はイスラエルに対し、イランの核からの脅威を取り除くことを目的に、核の傘を提供すると言ったということであろう。そして、それはイスラエルがイランの核開発(核兵器開発)に対する不安から、単独でもイランを攻撃するという考えを、抑え込むためではないのか。

 時期を同じくして、アメリカ国防省のトーマス・メッツ准将は、イラク国内でのイランの動きが、収まってきていることを発表している、これまでのような、明らかにイランが関与していると思われるテロが、最近になって激減しているということのようだ。

 そのことは、イランの戦略的変更があったのではないかということだ。これまで、アメリカ軍を悩ませ続けてきた、道路わきの爆弾敷設が、元は60-80個もあったものが、最近では12-20個程度に、減ってきているということだ。

 この二つの記事から想像するに、アメリカは次のような考え方をしているのではないかと思われる。

:イランが核開発を継続したとしても、アメリカがイスラエルを核の傘の中に入れて守るから、イスラエルはイランに対する単独軍事行動を、起こす必要がないし、それをアメリカは許さない。

:イランはこれまでとは異なり、イラクへの関与を低下させてきており、アメリカ軍にとって、イランのイラクへの関与は、それほど頭痛の種ではなくなってきている。

:したがって、アメリカ軍はイラクから漸減でき、イランとの緊張を緩和させていくことができる。

もし、この推測通りに事が進むのであれば、日本はイランに対し、出遅れという状況になるのではないか。

 イランに対しては、アメリカ軍による攻撃の可能性を残しながらも、他方では、イランとの新たな関係構築への、鳥羽口を考えておく必要があろう。