イラクの北部クルド地区は、だいぶ前から自治区として、イラク中央政府とは、別の動きをしてきた。イラク北部が石油地帯でもあることから、クルド自治区では経済発展が進み、復興もだいぶ進んだ。
その上、クルド自治政府は外国の石油会社との間で、石油開発の合意にまで至っている。このことに不満を抱いたイラク中央政府は、クルド自治政府が外国の石油会社との間で、交わした契約を無効と発表した。
しかし、そのイラク中央政府による無効宣言は、必ずしもすべての外国企業との契約に、当てはまるものにはならなかったようだ。イラク中央政府が良好な関係を築こうとしている、友好国との契約を反故にすることは、その国との関係に、マイナスに働くからだった。
結果的に、一部の契約は履行されることとなり、それを見た外国企業各社は、クルド自治政府に対してあらゆる手段を講じて、接近するようになった。当然のことながら巨額なわいろも、動いているものと思われる。
こうしたクルド自治政府の享受するうまみを、イラク南部のバスラ県の幹部たちも、見ていたのであろう。そこで、バスラ県の幹部たちは、バスラ県もクルド地区と同じように、自治権を獲得しようと動き出したようだ。あるいは、外国の差し金によるのかもしれない。
もし、バスラ県がクルド地区と同様に、自治区になれば、この県にはイラクの70パーセントの石油が、埋蔵していると言われていることから、とんでもない金持ち自治国、が誕生することになろう。
バスラ県は住民の署名を集め、投票にかけ、イラク中央政府との交渉が順調に進めば、来年の後半までには、バスラ自治国が誕生するかもしれない。しかし、それはますますイラク国内状況を、複雑かつ困難で、危険なものにしよう。
いったい、誰がこの自治問題を焚きつけ、誰が得をしようとしているのか。イラク南部バスラ県の住民だけの知恵なのか、あるいは外国の働きかけなのか。まだ真相は見えてきていない。