中東三カ国の経済事情

2008年12月 4日

 アメリカで始まった金融危機は、確実に世界中に広がり、多くの国が国家的破産の寸前にあるようだ。韓国も中国もその例外ではないが、中東諸国でも顕著に、その傾向が現れてきている。

 中東諸国の中のイスラエル、イラン、アラブ首長国連邦の中のドバイも、金融危機に直面することにおいて例外ではない。なかでも、ドバイは世界の投資家や企業に、アラビア半島ばかりではなく、アラブ・中央アジアを含めた、ビジネスの拠点として、賞賛されてきていた。

 しかし、ドバイにも今回の金融危機は影を落とし、建設計画がキャンセルされたり、工事中の建物が放置される、という状況が生まれてきている。他方、ドバイでは、インフレが顕著になり、出稼ぎ者たちは苦しい状況に、追い込まれている。

 ドバイの企業家たちの中には、経営が苦しくなった自社を、売却しようとする人たちもいるのだが、なかなかうまくいっていないようだ。もちろん倒産企業も出ている。

 イランは自国の経済状況について、強気の説明をしてきている。イランはアメリカ発の、金融恐慌の影響を受けていないと主張してきた。その理由は、イランがアメリカに投資していなかったことや、イランが経済制裁下にあったために、直接的な影響を外国から、受けないからだということだ。

しかし、石油価格の値下がりは、大きく同国の経済に響いているようだ。石油価格が半分以下になったのだから、当然と言えば当然であろう。当初、石油価格が下落し始めた段階で、イラン政府は今後の石油価格を、65ドル程度に予測していたのだが、最近では石油価格は、50ドルを切るところまで、値下がりしている。

ついに強気のアハマド・ネジャド大統領も、経済状況の悪化を、認めざるを得なくなった。最近、彼はイランの各種計画が遅延される、あるいは一部取りやめになることを公言している。しかし、彼はイランの経済は大丈夫だ、とも説明している。

イランが石油価格の値下がりにより、自国内の各種開発計画に、資金が足りなくなってきていることは、外国のイスラム主義組織に対する援助にも、影響を及ぼしてくるのではないかと思われる。たとえば、レバノンのヘズブラやパレスチナのハマースなどがそれであり、一部イラクのシーア派組織についても、早晩その傾向がみられよう。

 イスラエルもまた、経済後退の影響を受けている。世界のユダヤ人から、同国に集まる寄付は、減少傾向にあるし、世界中に設立されている、ユダヤ組織の施設も、閉鎖に至ったところがある、とイスラエルは伝えている。

 世界を包んでしまった、アメリカ発の金融危機は、世界を震撼させるだけではなく、冷静にさせる一面もあるのかもしれない。そうであることを望む。