湾岸諸国首脳のあせりは何故

2008年12月 1日

 

 いままで私は、何度もイランがアメリカやイスラエルによって、攻撃される可能性を警告してきた。

 それに対する反応は、ほとんどの中東専門家も、中東で展開しているビジネスマンも「ばかげている」といいうものだった。その根拠は「アメリカの財政難はこれ以上戦争を拡大できない。」「イラク・アフガニスタンでてこずっているアメリカはもう戦線を拡大できない。」というものだ。

 それでは、第一次大戦の戦後賠償で苦しんでいたドイツが、何故第二次大戦を始めたのか、経済的にほとんど破綻していたエジプトが、何故第四次中東戦争を始めたのか、それでは何故、経済的に破滅状態にあるパキスタンが、インドと一戦を構えるような状況に至ったのか。

 戦争が起こる原因は、経済的余裕ではないということが、この前例からわかろう。

 先日ヨーロッパで開催されたIAEAの会議では、アメリカはもちろんのこと、ヨーロッパの複数の国が、イランの核濃縮継続に、激怒したというニュースが伝えられている。

 そのことに加え、お伝えしておきたいのは、湾岸諸国が異常なまでに、イランに気を使い、自国はアメリカのイラン攻撃の基地にはならない、と主張していることだ。また、湾岸諸国の多くが、独自にイランとの良好な関係を構築しようと、外交活動を活発に展開してもいる。

 もし、アメリカやイスラエルによって、イランが攻撃されることになれば、間違いなく湾岸諸国にある、アメリカ軍基地は攻撃され、湾岸諸国の石油ガス施設も、攻撃の対象となろう。イランが自国の石油ガス基地に対する攻撃を受けて、湾岸諸国の石油ガス施設を放置しておくはずがない、と考えるべきであろう。

 それ以上に湾岸諸国にとって不安なのは、居住地域がイランの報復攻撃の、ターゲットになることだ。そうなれば、都市部に人口のほとんどが集結している、クウエイトやバハレーン、カタール、アラブ首長国連邦などは、人口の7-80パーセントを犠牲にする可能性があろう。つまり、そうなれば国家としては、成り立たなくなるということだ。

 これまでに、サウジアラビアを始めクウエイトもカタールも、バハレーンもアラブ首長国連邦も、オマーンですらも、それぞれにイランとの緊張緩和、友好関係の樹立の努力をしてきているが、それは、彼らが一番矢面に立っており、危険な立場にあることから、敏感に現状の推移を、見ているということではないのか。 

 アメリカによるイラン攻撃、イスラエルによるイランに対する、先制攻撃が起こらないに越したことは無いのは、当たり前のことなのだが、日本はいったい何をしているというのだろうか。

 多くの日本人は「ありえない」という一言で、現状を甘く見ているのではなかろうか。それはムンバイの最高級ホテルで起こったテロと、同様の判断ではないのか。こんな一流ホテルなのだから、警備も万全であろう。テロなど起こるはずもないと思って安心していたのと同様に。