アラブ各国はファタハ・ハマースに中立

2008年11月28日

 アラブ諸国は今まで、表面的にはパレスチナ自治政府の、マハムード・アッバース議長を、パレスチナを代表する人物として認知死、彼の率いるファタハ組織をパレスチナを代表する政治組織と見なしてきた。

 したがって、ガザでファタハと戦闘を交わし、支配するに至ったハマース組織に対しては、認知しないという立場を、堅持してきていた。そうしなければ、パレスチナの統一した行政機関が、失われてしまうからだった。

 したがって、ハマースの代表イスマイル・ハニヤ首相が、合法的かつ民主的な選挙で、選出されたにもかかわらず、ガザでの戦闘と支配後は、このイスマイル・ハニヤ首相を無視する立場を取ってきた。

 しかし、最近になって、マハムード・アッバース議長に対する、ガザと西岸のパレスチナ人の支持が低下し、他方では、ガザに対するイスラエルの封鎖制裁が続き、パレスチナ人の生活が極めて困難なものになっていることから、イスマイル・ハニヤ首相を黙認できない状況が、アラブ各国に生まれてきていた。

 アラブ各国の国民はガザの窮状を知るに従い、自国政府が何の手だてもしないことに、怒りを募らせてきたからだ。そこで、ファタハのマハムード・アッバース議長とハマースのイスマイル・ハニヤ首相との、和解の仲介にアラブ諸国が動き出した。

 今回、エジプトのカイロで開催された、アラブ連盟の会議では、ファタハとハマースの和解を、アラブ連盟が主導するというものだった。そこで目立ったことは、これまでアラブ各国によって、無視され続けてきたハマースが、ファタハと同格になったということだ。

 アラブ各国代表は、ファタハに代わって、ハマースを支持するわけではないが、ファタハを唯一支持するという、これまでの立場を捨てて、ハマースをファタハと同等に、処遇するようになったのだ。

 もちろん、形式的にはアラブ各国代表は、ファタハのマハムード・アッバース議長に対し、その地位にとどまるよう説得をしている。それは同時に、マハムード・アッバース議長に対し、ハマースとの妥協を迫る性質のものであろう。

 パレスチナなかでも、ハマースと敵対関係にあるイスラエルですら、マハム-ド・アッバース議長のパレスチナ人の間での、支持が低下していることから、ハマースとの非公式な交渉が必要だと考えている昨今、アラブ各国が、今回のような動きに出たのは当然であろう。

 問題は、そうしたなかで、マハムード・アッバース議長が来年前半に予定されている、選挙を実施するか否かだ。現在の段階で、マハムード・アッバース議長は強気の「選挙前倒し案」を口にしたりしているが、それは本音ではあるまい。選挙を実施すれば、彼は結果的に、パレスチナ自治政府議長の立場から、引きずりおろされ、その後には、彼に絡む巨額の汚職問題噴出してくる可能性が高いからだ。