トルコで始まった不思議な現象

2008年11月27日

 

 トルコの政党同士の関係は、きわめて劣悪というか、激しい対立関係にある。野党は与党の党首をはじめ、議員までを含め、全人格を否定する、というのが当然のように行われているのだ。

 AKP (開発公正党)が与党の座に着き、AKPの議員の中から大統領が選出されたとき、野党側はあらゆるスキャンだろを探し攻撃し、軍と結託して、クーデターまでも計画したほどだ。

 野党の中でも、CHP(社会党)はAKPに対し、何処までも挑戦するという具合だった。そのCHPが最近、AKPの方針に対し、きわめて理解を示すようになってきているのだ。

 それは、CHPの集会で女性が、スカーフを着用してきたときに起こった。CHPの党首バイカル氏が、そのスカーフを着用した女性に批判の言葉を浴びせるのではなく、理解ある言葉を発したのだ。

 このニュースを目にしたとき、いったい何がCHPをして変化させたのか、といぶかっていると、もうひとつ意外なニュ-スが目に付いた。今度はAKPがCHPに対して協力すると、エルドアン首相の口から言わしめたのだ。

 つまり、いままで犬猿のなかであった与党AKPと、野党の代表社会党のCHPが、共に歩み寄りを示しているということだ。

 現段階で全てを解明するわけには行かないだろうが、およそ次のような推測が、成り立つのではないか。


:野党の憲法裁判所を使ったAKPに対する突き上げが起こった

:これに対しAKPはエルゲネコン問題を取り上げることにより、憲法裁判所の判事を含め、汚職に連なっている政治家や学者、マスコミ人、裁判官をあぶりだして見せた

:大衆はAKPが何処までエルゲネコン問題をAKPが暴露するか、強い関心を抱いた

:このAKPの攻勢の前に、CHPもたじたじとなり、AKPに擦り寄る作戦に切り替えた

:結果的にAKPはCHPを鷹揚に受け入れた


 さてこの与野党の関係の変化は、これからのトルコに何をもたらすのだろうか。たぶんに、AKPの一党独裁色が強まっていくだろう。

 しかし、そのことが結果的に、現在世界が直面している金融危機から、トルコをいち早く立ちなおらせる、力になって行くのではないか。

 そうあってほしいものだ。こういう国家の危機に際し、政府がどれだけ迅速に、正しい判断を下し、強硬にでも国民や国家を導いて行けるかが、復興の最大の力になるからだ。