シリアの核施設にウラン?

2008年11月20日

 もうだいぶ時間が経過したが、昨年の9月、シリアの核施設がイスラエル空軍機によって空爆され、完全に破壊されるということが起こった。

 当初、シリアはこの施設が核施設であることを否定していたが、次第に暗黙のうちに、認めた形になっている。イスラエルとアメリカは、この建物が核施設であり、シリアもイランと同様に、核兵器の開発に向かっていたという、オドロオドロした説明を行っていた。

 確かに、シリア側の反応を見ていると、この空爆を受けた建物は、核施設であったろう。しかし、それは建設中であり、完成していたわけではないし、核兵器の製造を目指していたとも、断定しかねるものであったろう。

 イスラエルが核兵器を持っている以上、イスラエルと敵対的な関係にあるアラブ諸国は、核兵器を持ちたいと思っていることは事実であろうが、核兵器を開発するには、相当の時間と費用を伴うということだ。

 イランの核開発が世界的な話題になってから、しばらくの時間が経過したが、いまだに核を持つに至っていないし、実際に使用できるような、ミサイル搭載可能な小型のものにするには、もっと時間がかかろう。

 さて、今回問題になり始め、それを取り上げたのは、イスラエルやIAEAがシリアの空爆された核施設で、ウランが検出されたというニュースが、伝わってきたからだ。

 つまり、シリアは確実に核兵器の開発に動いていた、ということを証拠立てよう、ということであろうが、どうも話には無理がありそうだ。建設途上の核施設に、なぜウランがあったのか、常識では考えられないことだ。

 燃料としての核燃料棒が持ち込まれるのは、工事が終わり核施設が完成した段階のことに限られるからだ。シリア側は「アメリカはあの建物が核施設であり建設途上にあった。」と説明しているが、「したがって、そこにウランが持ち込まれることはないはずだ。」と説明している。

 IAEAが客観的な立場から、このウラン発見を主張するのであれば、イスラエルが空爆時に、微量のウランを投下したと考える方が、まともな推測ではないのか。いずれにしろ危険極まりない話だ。

 イラクは核兵器をはじめとする、WMD (大量破壊兵器)の開発をしているということを、でっち上げられて、アメリカ軍により全面攻撃を受けた。シリアでも同じような話になるとすれば、極めて犯罪に近いことではないのか。