オバマ氏が次期大統領に選出され、アメリカ国内は「アメリカン・ドリーム」の美酒に酔い浸っている。アラブやイスラム世界では、彼の出自がアフリカのケニアであり、イスラム教徒の家系だということもあって、大きな期待が寄せられている。
イランはアメリカとの戦争を懸念していたこともあり、オバマ氏が次期大統領に選出されると、アハマド・ネジャド大統領は大喜びで、祝意を伝えている。しかし、流れてくる情報を細かくチェックしているとか、必ずしも楽観できるものではなさそうだ。
オバマ氏の大統領就任にあわせ、副大統領候補となっているバイデン氏は、選挙キャンペーンの中で、オバマ氏は大統領就任後まもなく、大決断を迫られるだろうといった内容の演説をしている。彼は民主党のなかにあって強硬派の代表格の人物だ。
パウエル元国務長官も、「オバマ氏は大統領就任後間もなく、非常に困難な事態に遭遇するだろう」と語っている。しかも、彼はその非常に困難な事態の時期が、来年の1月21日から22日だというのだ。
このバイデン氏やパウエル元国務長官の予想する、オバマ氏が直面する未曾有の困難とは何なのかということを考えたとき、イスラエルの歴史学者ベニー・モリス氏の発言が気にかかる、彼の発言が、その未曾有の事態を、予告しているのではないか。
彼はアメリカの大統領がイスラエルびいきの、ブッシュ氏である間に、イスラエルはイランを攻撃すべきだ。来年の1月になれば、イランはロシアから対空砲(対空ミサイル?)を入手する、とも語っている。
忘れてならないのは、来年の段階では、イランが核原発に燃料棒を挿入することになり、その後の攻撃は放射能が飛散することから、不可能になるということだ。したがって、イスラエルがイランを攻撃するのであれば、来年の早い時期が、時間的には限界ということになろう。
このベニー・モリス氏は、イスラエルによるイラン攻撃が可能な時期を、今年の11月5日から来年の1月19日までとしている。
オバマ氏の補佐官には、ラーム・エマニエエル氏が任命されたが、彼は18歳までイスラエル国民であり、彼の父親はイスラエル建国時のテロリスト組織、イルグンのメンバーだったということだ。
こう考えてみると、オバマ氏の大統領就任は、イランが期待するような状況を生み出すのではなく、逆にアメリカ・イラン関係を一層、緊張させることになるのではないか。
これまで何度となく、アメリカ・イラン関係は緊張を生み出してきたにもかかわらず、何とか戦争にいたらずにすんできたが、今回もそうあってほしいものだ。そうでなければ、イランと周辺諸国に多くの犠牲者を生み出すと同時に、世界の経済が壊滅的な打撃を受ける、危険性が高いからだ。