最近になって、どういうわけか、ナゴルノ・カラバフ問題が重要視され始めている。このナゴルノ・カラバフとは地名だが、アゼルバイジャンとアルメニアの中間に位置する場所だ。山岳地帯にあって、アルメニア教会関係などの、遺跡が多いことで知られている。
ナゴルノ・カラバフとは「山岳地帯の黒い庭園」という意味なのだそうだが、標高3000メートルほどに位置し、高山植物が群生している、風光明美な場所だということだ。
このナゴルノ・カラバフは本来であれば、人口比などを考えても、アルメニアに帰属していたはずなのだが、ソ連時代には、アゼルバイジャンに帰属していた。それはスターリンによる民族政策の結果だということだ。
アゼルバイジャンとアルメニアとの間では、ソ連解体後、ナゴルノ・カラバフ地区の領有をめぐって戦争が起き、現在ではアルメニアがナゴルノ・カラバフ地区を支配している。
11月に入り、ロシアの外相がナゴルノ・カラバフ問題の調停に動き出している。同じように、トルコがナゴルノ・ラバフ問題の解決に向けて、動き出している。ロシアもトルコも、ナゴルノ・カラバフ問題の解決に動き出したのは、石油・ガス・ルートの確保に目的があるのではないかと思われる。
もしナゴルノ・カラバフ問題が解決すれば、ガス・石油のパイプ・ラインはグルジアを経由することなく、トルコにつなげることができるのだ。それはロシアにとってグルジアを完全に孤立させることにつながるのだ。ロシアとトルコとの間に話がつけば、ロシアのエネルギー資源ばかりではなく、中央アジアのガス・石油資源も同様に、このルートを活用できるということになる。
ロシアがナゴルノ・カラバフ問題に今動き出したのは、グルジアとの戦争に対するアメリカの動きに、自信を得たからではないか。
グルジアが手を出し、ロシアが反撃した結果、グルジアのアブハジア地区と南オセーチア地区が、分離独立の方向に進んだ。しかし、アメリカはそのロシアの策謀に対し、何ら具体的な手が打てなかった。
つまり、ロシアは今のうちなら、ロシアの希望するような形で、ナゴルノ・カラバフ問題の仲介をすることができ、アゼルバイジャンとアルメニアを掌中に取り込むことができる、と考えたのかもしれない。
そこで、そのロシアの策謀の前に、立ちふさがるのはトルコだが、トルコとの交渉が今後の、ナゴルノ・カラバフ問題解決のカギ、になってくるのではないか。グルジア紛争が起こった際に、ロシアの外相が最初に訪問した国は、トルコだった。
つまり、ロシアとトルイコはお互いに、自国のメリットに向け共闘(?)しあっているのかもしれない。その共通のテーマにナゴルノ・カラバフ問題が浮上してきたということではないか。