アメリカの大統領に黒人のバラク・オバマが選出された。そのショックは世界中に伝わっている。バラク・オバマ氏の先祖の地ケニアでは、アメリカの援助が増えるだろうという期待から、国を挙げてバラク・オバマ氏の当選を、喜んでいる。
アラブ諸国もほとんど例外なく、バラク・オバマ氏の当選を歓迎している。バラク・オバマ氏が中東にも、変化(チェンジ)をもたらしてくれるだろう、という期待からだ。
イラクではすでに、アメリカ軍が部分撤退を、11月中に実行することが伝えられ、イラク国民の間から、好感をもたれている。バラク・オバマ氏は選挙戦中から、アメリカ軍のイラク撤退を、6カ月以内に実行すると語っていた。
トルコではバラク・オバマ(民主党)が、大統領に選出されたことで、トルコとアメリカの関係が強化されると予測し、期待を寄せている。
イスラエルでは、大統領選挙の出口調査で、78パーセントのユダヤ人がバラク・オバマに投票したことを、誇らしげに伝えっている。
しかし、バラク・オバマが大統領に就任した後に、彼を待ち構えているのは、解決困難な沢山の問題であることを、同時に、アラブもイスラエルも認識しているようだ。
たとえば、イスラエルとパレスチナの問題は、アラブ諸国に直接的な影響を及ぼすものだが、イスラエル・パレスチナ双方が、内部に抱えている問題で、解決は困難を極めることが、今の段階から予想できよう。
いやな予感を抱かせるのは、バラク・オバマ氏の当選が決まった後、イスラエルによるガザ空爆があり、それに対する報復のミサイル攻撃が、パレスチナのハマースによって、行われたということだ。しかも、それは6月以来のものだった。
イランとの緊張関係も、イラン側はバラク・オバマの当選を、早い段階から期待していたが、そう簡単ではあるまい。バラク・オバマの当選発表の後、アメリカ軍のヘリがイランの領空を侵犯したことで、イラン側はアメリカに対して警告を発している。
イラク問題でも、アメリカ軍が部分撤退を、早期に実行するだろうが、その後のイラク国内情勢が、安定するという保証はない。最近になって、イラクの首都バグダッドを中心に、爆弾テロが繰り返され、活発化しているのだ。
トルコはアメリカの新大統領に、期待しているようだが、アメリカがトルコを重視するのは、アメリカ軍がイラクから部分撤退した後の、予備軍としての価値であろう。アメリカは不測の事態に備え、なんとかトルコをイラクに引きずり込もう、と考えているのではないか。
CNNが「中東はオバマを歓迎するが、困難な問題が残っている」と厳しい予測を伝えている。バラク・オバマ氏の副大統領に予定される、バイデン氏は選挙期間中の演説で「オバマは今後、近い将来に困難に直面するだろう、大決断を迫られるだろう」といった発言をしている。
バイデン氏は今後、イランとアメリカが厳しい状況に向かっていくことを、におわせる発言をしていることも、記憶に留めておくべきではないのか。