ヨルダンがハキーム師暗殺を試みた?

2008年11月 3日

 

     イランのプレスTVというサイトがあるが、そのサイトが11月2日に物騒なニュースを流した。その物騒なニュースとはヨルダンの情報機関が、イラクのシーア派指導者(イラク・イスラム革命最高評議会であるアブドルアジーズ・ハキーム師を毒殺しようとしたというのだ。

 報道によれば、2007年にアブドルアジーズ・ハキーム師がヨルダンを訪問し、アブドッラー国王に会った際に飲んだコーヒーの中に、毒薬が入っていたというのだ。アブドルアジーズ・ハキーム師はその後、腹痛に襲われ、急遽イラクに帰国して治療を受けたが、それでも治らず、イランに出向いて治療を受け、一命を取り留めたということだ。

 その毒薬はタリウムで、サダム体制が反体制派の人物を暗殺する場合に、使っていたものだということだ。ヨルダンでも情報部が、ヨルダン在住のイラク人や、サダム体制の時代にイラクからヨルダンを訪問する要人に対して、使われていたものだということだ。

 アブドルアジーズ・ハキーム師はその後、体重が20キロも減少し、脱毛したということだ。そして、癌に冒されたとこのニュースは伝えている。

 アブドルアジーズ・ハキーム師はこのことを、ヨルダン政府に伝え抗議しようとしたが、アメリカのクローカー大使がマリキー首相に対し、ヨルダン側に伝えることを、抑えたということだ。

 このニュースが事実か否かについては、現段階では判断しかねるが、何故この時期に、このニュースがイラン側から流されたのかについては、推測することが出来よう。このニュースをイランが流したということは、イランが親米派の代表格であるヨルダン政府に対し、挑戦状を突きつけたということと同じであろう。

 それでは何故、イランが親米派の国に挑戦状を突きつける必要が、あるのかということになるが、それは、イランがアメリカの攻撃を受ける可能性が高くなった、と考えているからではないか。そして、イラク政府がアメリカの圧力によって、SOFA(治安協定)を結ぶ方向に、向かっているからであろう。イラクを基地に、アメリカがイランを攻撃してくるのでは、イランは非常に不利な戦いを強いられるからだ。

 そして、アメリカのイラン攻撃が少しでも遅れる、あるいはやりにくくなるためには、イラン周辺の国々の中に、混乱を引き起こすということであろう。今回のヨルダン政府による、アブドルアジーズ・ハキーム師の暗殺未遂事件のニュースは、イラク国内の彼を支持するシ-ア派国民の間に、ヨルダンに対する敵意を植え付けるだけではなく、イラクのマリキー首相に対するする敵意と不信感も、同時に生み出すであろうし、アメリカに対しても、同様に敵意をあおる結果になろう。

 イランはヨルダンを非難することによって、結果的にマリキー首相を窮地に追いやり、イラク国民の間に反米感情を高めるという、高度な作戦を仕掛けているのかもしれない。つまり、それだけ今のイランとアメリカとの関係は、緊張しているということであろう。

 イランがヨルダンを暗殺未遂で非難しても、ヨルダンにはイランに対して、軍事的に攻撃できまいし、情報部員を送り込んで、破壊工作をすることも考えられない。ヨルダンはアメリカやイラクのマリキー首相を、間接的に叩く上で、好都合な国だということではないのか。