最近になって、イスラエル国内では戦争を待望するような、いやな雰囲気が拡大しているようだ。
カデマ党党首のツビ・リブニ女史が進めた、他党との連立工作が失敗し、当分の間はシリアとの和平交渉も、パレスチナとの和平交渉も、停止状態になった。
確かに現段階は、オルメルト首相にしてみれば、リブニ党首が次の政府を作るまでの、臨時的な首相としてとどまる期間であり、オルメルト首相が真剣にシリアやパレスチナ側との、和平交渉をしたいと思っても、シリアもパレスチナも、まともに対応してくれはすまい。
それでは、リブニ党首に和平交渉が、現段階でできるかといえば、それも無理な話だ。他方、イスラエル国民の間では、日に日に兵器の数を増やし、勢いを増して行くレバノンのヘズブラと、大量に兵力をレバノン国境に移動させている、シリアの動きを見ていると、戦争に備えなければ、先制攻撃をかけなければ、という焦りが出てきているようだ。
そうしたイスラエル国民の焦りを反映してか、イスラエル国内では、リブニ党首(和平派)よりも、ネタニヤフ党首(強硬派)に対する支持のほうが、最近になって増えているという情報がある。
先にも報告したように、リブ二党首とネタニヤフ党首が、選挙で得るであろう議席数はほぼ同じだろうが、連立を組む場合には、ネタニヤフ党首のリクード党のほうが、他党を抱き込みやすいということのようだ。
レバノンからはヘズブラの幹部によって、前の戦争時よりも兵器の装備が整っていると言い、イスラエルによって殺された(?)ムグニヤの弔い合戦をやる用意は、出来ているという、強気の発言が繰り返えされている。
シリアも、最近になって、レバノン国境に軍を移動させているが、どうも通常の動きではなく、戦争に備えた軍の移動ではないか、という推測が広がっている。それはシリア軍の移動が、大量の戦車やミサイルを含んでいるからだ。
シリアの核施設が空爆されてしばらくたつが、シリアは報復が出来るのであれば、やりたいと考えているだろう。そうした鬱積した気分のなかにいるシリアに対して、アメリカ軍がアルカーイダの幹部の隠れ家があるとして、シリアの北東部の街を攻撃し、8人の死者を出し、2人が人質になった。
シリア国民がこのアメリカ軍の攻撃に対し、怒りを爆発させ大規模な抗議デモが、シリア国内各地で展開されてもいる。
イスラエルあるいはアメリカが、あと一押しすれば、レバノンのヘズブラがシリアの意を受けて、軍事行動を起こす危険性があるということだ。もちろん、その場合、シリアも動かざるを得なくなるかもしれない。
その戦争がイランに波及するのか、あるいはそうはならないのか、非常に微妙な段階に入ってきているのではないかと、懸念される昨今の状況だ。