以前にも書いたが、1982年ごろだったと思うが、クウエイトでスーク・マナーハ事件が起こった。クウエイト政府が発行する国営会社の株は、クウエイト国民だけが買えるものだった。それは株式配当という名目で、政府が国民に石油収入の一部を配分するためのシステムだった。
したがって、国営企業の株は年々値上がりしていったが、外国人には買えなかった。そこで私設の株式市場が誕生し、まさにペーパー・カンパニーの株が売買され、ものすごいスピードで値上がりして行った。
もちろん、この値上がりを目の前にして、クウエイト国民の多くが手を出した。しかし、所詮は架空の取引であり、やがて私設の株式市場で売買されていた株は、大暴落することとなった。そして残ったのは、膨大な額の借金だった。
なかでも、クウエイト国民は政府の銀行から、ほとんど制限無しに、金が借りられるような状態にあったために、銀行から株を買う金を借り、友人からも借り入れて、この私設の株の投資に使ったのだ。
結果的に、これらの巨額の負債を抱え込んだクウエイト国民は、国外に脱出し借金の返済から逃れようとした。最終的には、クウエイト政府が恩赦のような措置をとり、多くの国民が逃亡先から、帰国出きることになった。
今回の金融ショックで、湾岸諸国の全ては、石油収入があることから、他の国々に比べ、国家としてはあまり問題はない、というのが一般的な見方だ。しかし、それでもサウジアラビアを例にとると、石油精製会社、保険会社、銀行などが一日で10パーセント程度落ち込み、全体としては8・7パーセントも落ち込んでいるということだ。
この窮地に、サウジアラビアのアブドッラー国王は、王室プレゼントとして100億リヤル(1サウジ・リヤル=34円)を、ローンの支払いに寄付している。
しかし、湾岸諸国の国民たちは、湾岸諸国が発行する株を買える、システムがあったために、湾岸のどこかの国で株が売られるというと、我先にとその株を買いに走っていた。その金額は膨大なものであったと思われる。
しかし、それらの株もいまでは、暴落しているのではないか。そして、その結果はどうなるのだろうか。湾岸各国の国民自身では、背負いきれないほどの負債になってしまっているのではないか。
そこで関心がもたれるのは、ドバイの人工島に作られたリゾート型住宅だ。計画の段階で完売し、それが完成すると数倍で売れ、それを転売すると、、、。という夢のような話だったが、この住宅の購入も銀行からの借り入れによるんのではなかったか。
だから以前に、ドバイの商法はばくちの、胴元のようなものだと言ったのだが、、。今では人工島から出る汚水で、観光用海岸は汚染されているということだ。もともと、室内気温が50度以上になるドバイで、住宅が売れるということが不思議ではないか。夢を追った多くの湾岸国民が、その夢に敗れたのではないかと思われる。
資金が自由に手に入った者ほど、高みからの墜落で怪我する度合いが、ひどいのではないか。それがイスラム原理主義の増長に、繋がらなければいいのだが。