粗暴さが目立ってきたアメリカ軍の動き

2008年10月27日

 

イラクとの国境に近いシリアのアブカマールにある、スッキラヤ村で10月26日午後、民間住宅が攻撃されるという事件が起きた。攻撃したのはイラク駐留のアメリカ軍ヘリだった。4機のヘリが民間住宅を爆撃し、子供4人を含む8人が犠牲になった。

 この空爆についてアメリカ側は、「シリアからイラクに飛来する戦闘機網を狙ったものだ、」と説明しているようだが、実に要領を得ない。なぜ戦闘機網と村の民間住宅が関係あるというのか。

 もし、この民間住宅がシリアからイラクに潜入する、テロリストの隠れ家なり、集結場所だというなら、それなりに納得がいかないでもないのだが。

 いずれにしろ、無意味な空爆としか思えないのだが、そうでもあるまい。アメリカ軍のヘリが攻撃したのには、何らかの確たる理由があるはずだ。その理由は、推測の域を出ないが、以下のようなことが、考えられるのではないかと思われる。


:アメリカ大統領選挙に影響を与える。シリアとの間で緊張が高まれば、マケイン氏が有利になることが考えられる。

:この住居がイラクに侵入してくるテロリストの集結場所だったが、アメリカ側にはその事実を、明かしたくない理由があった。

:アメリカ軍の中の強硬派がシリア・イスラエル間に緊張を生み出すために行った。

:トルコの仲介によるイスラエル・シリア和平交渉を潰し、トルコの地域での影響力拡大を押さえ込む。


 アメリカ軍が空爆を行ったのは、これらのいずれか、あるいは全く違う理由からかもしれない。少なくとも、シリアから戦闘機がイラク側に飛来するということは、ありえないわけであり、アメリカ側が主張する「シリアからイラクに飛来する戦闘機網を狙った」ということではあるまい。

 パキスタンの部族地域に対しても、アメリカは攻撃を加えている。この結果、ビルが破壊され、20人にも及ぶ死者が出ている。もちろん、パキスタン政府はアメリカ政府に抗議しているが、それでアメリカ軍の攻撃が停止されるとも、アメリカ政府が真摯にわびるとも思えない。

 アメリカの大統領選挙に絡んでなのか、あるいはそれ以外の理由からなのか知らないが、最近のアメリカの動きが、粗暴さを増しているような気がする。そして、イスラエルでも和平に逆行するような動きが、目立ち始めている。

 リブニ女史が連立に失敗したのは、その典型的な例であろう。その後に計画されている早期選挙では、強硬派が有利になることが、考えられるのではないか。アメリカ軍によるシリアへの攻撃などがあり、イスラエルの強硬派が勇気付けられたのではないか、と思われるからだ。