リブニ・カデマ党首選挙で勝負に出る

2008年10月26日

 

 イスラエルの与党、カデマ党の党首に選出されたリブニ女史が、連立政府の結成に努力していたが、シャス党の抱き込みに失敗し、結果的には連立政府の結成に失敗した。このことは、今後のイスラエルの内外政治に、大きな波紋を広げていくものと思われる。

 第一に考えられるのは、イスラエルの選挙が、当初の予定の2010年ではなく、今後4ヶ月以内、つまり来年の2月までに、行われることになったということだ。したがって、イスラエル国内情勢は、今後、選挙一色に塗りつぶされることになり、パレスチナとの和平交渉には、力が入らなくなろう。

 そのことは、ブッシュ大統領任期中に、何らかの成果を生み出したいと願っている、ブッシュ政権にとっては、明確な中東和平交渉の、失敗ということになろう。ライス国務長官の度重なる中東訪問と、イスラエル・パレスチナ間の仲介工作は、水泡に帰するということだ。

 パレスチナ側も、今回のリブニ女史の選挙への移行を受けて、中東和平交渉に本格的に、取り組むことはあるまい。問題はその結果、イスラエル国内でもアラブ諸国のなかでも、ある種の強硬な意見が、幅を利かせるようになるということだ。

 イスラエルではネタニヤフ元首相の意見が、支持を増やす可能性があろうし、シリアでもトルコの仲介による、和平への動きが止まろう。そうした変化は、イスラエル側とアラブ諸国側の双方に、相手側に対する不信感を募らせ、緊張を高めていくということだ。

 不安の中では、新たな不安が生まれ、疑心暗鬼が拡大していくことになるわけであり、イスラエル国内の強硬派の主張する、「イランの核施設をた叩け」といった暴論が、再度支持を増やしていく可能性があろう。

 リブニ女史の前任者のオルメルト首相にしろ、その前のシャロン元首相にしろ、現実の政治を担当した人たちは、いまこそイスラエルにとって、和平が必要だということを、十分わかっていたものと思われる。もちろんペレス大統領もその一人だ。

 しかし、今回の連立内閣結成の失敗から、選挙に移行したということは、イスラエル政治の方向を、和平から大きく遠ざけていくかもしれない。2月に選挙が行われるまでに、イスラエル国民が冷静に現状を分析し、選挙で和平の選択を明確に支持しなければ、今後の中東はますます混乱を極めていくことになろう。

 最近、一部の国際問題専門家の間に、アメリカや一部の世界を動かす人たちの間で、中東をはじめ、世界全体を混乱に陥れたいという、欲望が渦巻いている、と主張する人たちがいる。もし、そのような指摘が正しのであれば、そのような陰謀に対し、世界中で反対の動きを、起こしていくべきではないのか。それが単なる「イフ=もし」であることを願うばかりだ。