来年のことを言うと鬼が笑う、という言葉があるが、あえて来年のことを書いてみたい。来年の6月に、イランの大統領選挙がおこなわれる。今度の大統領選挙で誰が有利になり、当選するのかということが、既に欧米の間では、大きな話題になり始めている。
アハマド・ネジャド大統領の、イスラエルに対する激しい敵対的な発言が続いたことが、イランの大統領選挙に対する、欧米の大きな関心を呼んでいる、原因の一つであろう。
同時に、イランがアハマド・ネジャド大統領再選で、強力に核開発が継続されていき、イランがやがては核兵器保有国になるのか、ということも大問題であろう。
イランが核兵器を持つということは、イスラエルに対する脅威であると同時に、それよりも湾岸産油諸国に対する、無言の圧力となろう。
湾岸産油諸国がイランの核兵器に脅え,言うことを聞くようになった場合、アメリカやヨーロッパが、これら諸国に要請することが通りにくくなり、石油供給そのものに、大きな不安が出てくるかもしれないということだ。
さて、石油価格の高騰に助けられて、アハマド・ネジャド大統領は非常に幸運な、大統領期間を過ごしてきたが、ここにきて、石油価格が下落し始め、次回選挙を前に、国家の資金不足から、対応策で苦慮しそうだ。
付加価値税3パーセントを提案したところ、バザール商人の猛烈な反対を受け、引っ込めてしまったが、それ以外には、国家の収入を増やす手立ては、見つかっていない。
アハマド・ネジャド大統領にとって、次期選挙が不利になってきた要因の一つには、イランの宗教最高権威である、ハメネイ氏の病状が悪化いてきていることだ。彼が権限を発揮できなくなれば、対抗馬のラフサンジャン二元大統領が台頭し、穏健派を支援するであろうことから、アハマド・ネジャド大統領は苦しい選挙を、戦わなければならなくなるだろう。
石油価格がどのレベルで推移するかも、大きな問題だ。一時期150―60ドル台に達していた石油価格は、現在60ドル前後で推移している。イランにとっては、できれば70-80ドル台で推移してくれれば、と望んでいるようだ。この点について、ロシアの石油専門家は「たぶん75ドルから80ドルで最終的には落ち着くのではないか。」という見通しを最近口にしている。
石油価格の推移と同時に、アメリカとの関係がどうなるのか、ということもイランの大統領選挙には、影響を与える要素であろう。アラブ諸国もそうだが、イランの場合も、国民にとっての、完全に自由な空間は自宅であり、自家用車だからだ。
イランは石油産出国であるにもかからず、製油施設が不足しているために、ガソリンを大量に外国から輸入している。このガソリン価格が高騰すれば、無条件にイラン国民は、アハマド・ネジャド大統領に反発することになる。このことから、欧米の専門家はイランに圧力をかけるには、ガソリン輸入を阻止するのが、一番効果的だとさえ語っている。
アハマド・ネジャド大統領の再選には、ここに挙げただけでも、幾つものハードルがありそうだ。もちろん、彼の前にはこれ以外にも、これから次々、に高いハードルが姿を見せてくるだろう。