危険なイラン・イスラエルの恫喝合戦

2008年10月24日

 最近になって、不思議な傾向が目立ち始めている。一時期は、アメリカがイランを攻撃する可能性が、中東ニュースのトップを飾っていたが、アメリカによるイラン攻撃の話は、アメリカの大統領選挙が大詰めに入っていることもあってか、後退している。

 それとは逆に、イスラエルとイランの双方から、先制攻撃の可能性に関する、情報が頻繁に流れてきている。イスラエルからは、イランが原発に核燃料を入れてしまってからでは、攻撃ができなくなるとして、先制攻撃の時間的リミットが、迫っているというニュースが、何度となく流されている。

 これに対し、イラン側はイスラエルが攻撃してくる前に、先制攻撃を加えるという話が、漏れ伝わってきている。

 同時に、イスラエルはイランの軍事力を、冷静に評価すると、本格的なイスラエルに対する、攻撃は不可能だとし、イスラエルまで届くイランの長距離ミサイルは、100発程度しかなかいと伝えている。

 イスラエルのこうした主張に対し、イラン側も負けてはいない。イスラエルはアメリカの参加をあてにしなければ、イランを攻撃できないし、攻撃したとしても、それはイランが反撃撃退できる、と豪語している。

 当然のことながら、イスラエルのイラン攻撃と絡み、アメリカのイラン攻撃のことも話題に上っているが、イラン側は「アメリカは戦争を始めることはできても、それを終わらせることはできまい。」とし、イラクやアフガニスタンで手こずっている、アメリカの戦略的能力、と軍事的能力に、大きな疑問符を付けている。

 イスラエルに対しても、アメリカに対しても、イランはこれ見よがしに軍事訓練を行ってみせ、イランの持つ兵器と、その実戦能力を誇示している。しかし、イランが所有している兵器は、アメリカ軍が装備している兵器の前には、おもちゃ同然であろうことから、どれだけ兵器を見せても、アメリカ側はあまり驚かないだろう。

 ただアメリカにとって、最も油断ならないのは、イラク国内に潜伏している、イランの破壊工作員の動きであり、イランの意向を強く受けている、イラク国内の親イラン派の動きだ。

 イランが主張するように、もしアメリカがイランを攻撃した場合、徹底抗戦になり、イラクでもアメリカ軍に対する、本格的な攻撃が始まれば、アメリカ軍は相当のダメージを、受ける可能性はある。

しかも、アメリカが強引に受け入れさせようとしている、イラクとの治安協定に対する、イラク国民の反発は強い。イランのアメリカに対する敵対に従ってではなく、イラク国民の自主的な反米抵抗戦争が、始まる危険性は高かろう。

イランの恫喝のもう一つの材料は、レバノンのヘズブラであり、パレスチナのハマースだ。これらの組織は、アメリカあるいはイスラエルが、イランを攻撃し始めれば、自動的にイスラエルに対する、本格的な攻撃を始める、と考えておいた方が正しいのではないか。

軍事大国の戦争は、いわば正面攻撃型であり、ヘズブラやハマース、そしてイランやシリアがこれから使うであろう、ゲリラ戦ではない。ゲリラ戦に対する対処能力は、イスラエルもアメリカも、あまり高くないのではないか。

イランとイスラエルが、相互に行っている恫喝戦、神経戦は、それだけに大爆発の、導火線ともいえる、危険なものではないか。