パンナムの旅客機が、イギリスのロカビー市上空で爆発し、機内の259人と、ロカビー市の住民11人を殺害するという事件が、1988年12月18日に起こったことをご記憶の方は、少なくなっているかもしれない。
この事件後、アメリカとイギリスは、リビアが行ったテロだとして追及し、長期の制裁後、カダフィ大佐が妥協し、容疑者二人をイギリス側に引き渡す、ということで決着がついた。
容疑者ファヒーマ氏とメグラヒ氏は、リビア航空の職員で、マルタ空港で爆発物を積み込んだといわれていた。当時、PFLPが実行犯と言われたり、イラン主犯説やシリア説などが語られていたが、結局のところ、賠償能力があるということも絡んでか、リビアの犯行ということで決着したのだ。
以後、ファヒーマ氏は釈放されたが、メグラヒ氏は犯人として、受刑することとなった。彼はイギリスの刑務所に収監されていたが、最近になって、彼が前立腺癌にかかっており、他の部分にも癌が転移しているというニュースが、彼の弁護士によって伝えられた。
癌にかかったメグラ氏の余命が、どの程度あるのかについては、弁護士は明らかにしていないが、このことが理由で、メグラヒ氏が釈放されることがあれば、リビアとアメリカ・イギリスの関係は、完全に正常化するということではないか。
パンナム機の爆破事件の処理は、極めて政治的な判断が絡んだものであっただけに、その終章も、極めて政治的なものになるのではないか。