バルザーニがトルコ・クルドの分離帯構築認める

2008年10月22日

 

 これまで、トルコ政府が交渉相手としてこなかった、クルド自治区のマスウード・バルザーニ議長が、大きな譲歩をトルコ側に示したようだ。その譲歩とは、トルコ側がPKKの攻撃を抑えるために、クルドとの国境地帯に、安全のための分離帯を、構築することを認めたというのだ。

 このマスウード・バルザーニ議長の新しい立場は、イラク軍のバービキール・ズイバーリ司令官によって、もたらされた情報だ。このイラク軍の司令官は、名前からわかるように、クルド人であることから考えると、マスウード・バルザーニ議長の新たな立場に関する情報は、ほぼ間違いなかろう。

 バービキール・ズイバーリ司令官の語るところによれば、マスウード・バルザーニ議長はトルコ側がクルドとの国境地帯に、分離帯を構築することを認める条件として、トルコ政府がクルド自治政府との間で、正式な対話を開始することと、クルド自治政府とテロ組織であるPKKを、完全に別個のものとして、受け止めることだとしている。

 そして、トルコ政府がクルド自治政府との、良好な関係を構築していくことが、求められている。

 このことは、先のトルコ代表団のバグダッド訪問時に、クルド自治政府側が、トルコ代表団と話し合えたことを、大きな前進として、捉えたということであろう。

 同時に、クルド自治政府をはじめとする、イラクのクルド人たちが、どれだけ将来に対する不安を、抱いているかを表していよう。アメリカ軍が大幅に、イラクから撤退するようなことになれば、クルド人の安全は、脅かされる危険性が高まるからだ。

 そのような危険な状況に陥る前に、クルド側はトルコとの良好な関係を、構築しておきたい、ということであろう。そうなると、クルド自治政府やイラク軍の中のクルド将兵が、PKKに対する厳しい対応をとり始め、PKKはイラクのクルド領内から、自由な戦闘をトルコに対して行うことが、困難になっていくということではないか。

 そうなった場合、PKKは都市型テロを、主な戦術として選択していくかもしれない。そのPKKの戦術面での変化を、どう抑えていくかということが今後、トルコがPKK対策を考えるうえで、最も重要な問題になってくるのではないか。