サウジの和平案にイスラエル心動かされる

2008年10月20日

 サウジアラビアが2002年に提案した、包括的な中東和平案について、イスラエル内の穏健派は、心を動かされているようだ。

 このサウジアラビアの和平案は、1967年戦争以前の状態に戻すことによって、アラブとイスラエルが、最終的な和平を結ぶというものだ。つまり、ヨルダン川西岸地区ガザ地区、そして東エルサレムをパレスチナ側に引き渡し、難民の帰還権も認める。加えて、イスラエルが占領し続けているゴラン高原を、シリアに返還するというものった。

 このサウジアラビアの和平提案は、理にかなったものであったが、イスラエル側はこれを拒否してきた。その理由は、パレスチナ難民の帰還権が、最大の問題だった。難民が自分の家に戻れるということは、パレスチナ難民がイスラエル国内に、戻ってくるということだ。

このことは、大量のレスチナ難民が、イスラエル国内に入ってくることであり、彼らのイスラエル国民としての権利も、認める必要があろう(もし希望すればだが)。しかし、そのことはイスラエルの人口構成を、破壊してしまうことになるのだ。

 イスラエルにとっては、東エルサレムをパレスチナ側に返還する以上に、パレスチナ人口がイスラエル国内で増加する方が、大きな問題であろう。人口の逆転現象の時期が、早まる危険性があるのだ。

 そう言っても、イスラエルも何時までも、今のような不安定な状態に、アラブとの和平問題を放置して置くわけにはいくまい。そのような状態が続くことは、イスラエルは長期間にわたって、アラブ側からの危険に脅え、莫大な軍事費を、費やしていかなければ、ならないということだ。

 ペレス氏(現在大統領)からシャロン元首相、そしてオルメルト首相からリブニ首相候補への、イスラエルの権力の変遷は、イスラエルが平和を求めていることを、如実に表していよう。

 最近、バラク元国防報相はリブニ首相候補と会談し、サウジアラビアの和平提案について、検討したと語った。バラク氏は個別のアラブ諸国との、交渉の時期はすでに過ぎた。一括した形での交渉に、イスラエルは入るべきだ、と考えているという意見を述べている。

 これに対して、リブニ首相候補はコメントを拒否しているが、およそバラク氏と同じ意見であろう。彼女が明言を避けたのは、現在彼女が進めている、他党との連立交渉に、影響を与えるという懸念からであろう。