バベルの塔を建てたがる湾岸の金持ちたち

2008年10月13日

 

 アラビア半島の北東端に位置する、アラブ首長国連邦の一角をなす、ドバイという首長国がある。この国は早い段階で、石油資源が枯渇し、以来、石油に代わる経済繁栄策をとってきた。そのひとつが、ドバイをアラブ湾岸諸国の中で、外国人ビジネスマンにとって、最も快適なビジネス環境を提供することであった。

 世界中の航空会社が、乗り入れ可能になるように、空港の拡張と整備を進め、インターネットや電話の施設を整え、世界中の料理が楽しめる、高級レストランも用意した。そして、豪華なホテルとオフィスビルも建設した。

 結果的に、ドバイは湾岸諸国のなかでは、例外的にアルコールの入手も含む、あらゆる自由が享受できる国として、世界中の企業が支店を開設することとなった。

 そうした流れの中で、、ドバイは420メートルを越えるビルを建設しているが、新たに、これよりも高い、1000メートル以上の高さのビルが計画されている。地震の無い国だからできることであろうが、、日本では建設許可が下りないのではないだろうか。

 このドバイの超高層ビルは、当然のことながら、、世界中の関心を集めることとなった。そのことが、ドバイに世界中の企業を誘致させる、起爆剤になるということであろう。そうであるとすれば、この高層ビル建設は、ドバイにとって大成功ということであろう。

 ドバイの成功を横目で見ていた、サウジアラビアのワリード・ビン・タラール王子が、このドバイの1000メートルのビルよりも高い、1000メートル以上のビルを、同国の紅海に面した港町、ジェッダに建設することを発表した。

 そのビルの高さは、約1050メートル(3281フィート)だということだ。建設費は267億ドル、ビルの総床面積は、2300万平方メートルだということだ。このビルには住宅、ホテル、オフィスなどが入る予定になっている。

 こうした湾岸諸国の、高層ビル建設競走を見ていると、バベルの塔の話を思い出す。高いバベルの塔を建設することにより、人々の言葉がばらばらになり、お互いに相手の話している言葉を、、理解できなくなったという話だ。

 高層ビルの建築には、膨大な数の労働者が必要になる。彼らは低賃金で仕事に従事し、高い場所から落下して、死亡する者も数も少なくなかろう。彼ら犠牲者に対する保障は、きわめて小額であることが想像できる。

 以前に報告したように、ドバイでは不審な事故が起こったり、ストが行われたりしているが、そのストの中心となった人たちは、、強制送還されているのだ。自国には仕事が無いことから、ほとんどの外人出稼ぎ者たちは、過酷な労働、危険な作業に、何の不満も口にすることなしに、従事しているのだ。

 バベルの塔と同じように、湾岸諸国での高層ビル建築が、やがてはその国の社会内部に、不安定な状況を、、生んでいくものと思われる。自国民の何倍何十倍もの、外国人労働者の人口、彼らが不満を爆発させたとき、自国民の力だけでは、コントロールできなくなるのではないか。