世界では諸悪の根源はCIAという話がぶり返してきている

2008年10月 7日

 

私の学生時代だから、1960年代の終わりごろ、大学はどこも学生運動で休講の連続、社会的にも左傾化のためか、反米色が強かった。大学教授や文化人の多くが、左翼的な考えを持ち、アメリカを賞賛するような人たちは、徹底的に糾弾されていた。

 時代が変わったのだろうか、最近では急先鋒だった当時の左翼文化人が、いつの間にか、ナショナリズム高揚の旗頭に変身している。そのことを攻めはしないのだが、そうした御仁たちに言いたいのは、またぞろ「諸悪の根源はCIA」という考えが、世界的に広まりつつあるということだ。

 アラブ諸国、アフリカ諸国、中南米諸国では、反米色がこのところ強まっている。日本でも若者の間で、左翼文学本が売れているというが、若者は時代の変化に敏感なのかもしれない。

 湾岸のある国の文化財団の代表団が来日し、夕食をともにしたのだが、彼らは口をそろえてアメリカ批判をしていた。湾岸各国の株価が、どれだけ下落しているのかについて、そのうちの一人は、具体的な数字を挙げて説明してくれた。

 彼らのうちの一人が私に、日本の総理大臣が短期間で辞任するのはなぜか、という質問を向けたので、アメリカの要求が厳しすぎることも、早期辞任の原因のひとつだろうと答えた。

 湾岸から来た友人は「アメリカは勝手に戦争して、その代金を日本や湾岸諸国に要求してくる。こんなのにいちいち応えなければならないというのは、実に悔しい限りだ、と語っていた。その意見を聞いてふと、日本の官僚や政治家には、悔しいと思っている人たちがいるのだろうか、という疑問が浮かんだ。

 先日、日本で行われた総理総裁選挙の候補者たちに、フィナンシャル・タイムズ紙が、現在の金融危機に、どう対応すればいいか、という質問を向けたところ、ほとんどの総理候補者が、「日本にある虎の子を突っ込めばいい」と答えたというのだ。そのことは日本では報道されていないのだが、こんな大事なニュースを伝えない、日本のマスコミの姿勢にも、問題があると思えてならない。

 そうした雰囲気の中で、イエメンの大統領は真正面から、イスラエルのモサドを、イエメンで起こったテロの、背後にいると非難した。もちろん、モサドの背後にはCIAがいるということであろうが。

 このイエメンの大統領の発言が事実かどうかについては、現段階では判断できないが、少なくとも、小国とはいえ一国の大統領の発言だけに、重く受け止める必要があろう。ソマリア沖で起こっている海賊行為について、外国の中東専門家のなかには、「アメリカが背後にいる」という主張をする人が少なくない。

 最近では、9・11事件はアメリカの内部犯行という見方が、欧州やロシアでは、相当広がってきているということだ。

 世界経済、金融ががたがたになっているいまだからこそ、中心になってその建て直しに取り組む国が必要なのだが、アメリカの信用がこうまでも落ち込むと、主導国家は消えてしまうことになり、経済の低迷期は、長引くことが予想される。財団のアメリカ専門家の意見によれば、たぶん、アメリカが世界経済の牽引車に復帰できるのは、10年後ではないかということだ。

 その期間には、戦争が起こり、経済破綻による難民、飢餓といった問題も起ころう。その悲惨な状況に日本人も加わることになりそうだ。