アメリカのニューヨークの中心に位置する、世界貿易センタービルが、アルカーイダによって攻撃されたのは、2001年9月11日のことだった。
その後まもなく、アメリカはアルカーイダとその同胞である、アフガニスタンのタリバン政府に対して爆撃を敢行し、ついにはタリバン政権を消滅させることに成功した。
アメリカのブッシュ大統領は、9月11日の世界貿易センターに対するテロの後、世界でテロリストを相手に、100年戦争を展開すると息巻いた。しかし、今日なお、ブッシュ大統領の最大の敵とされるアルカーイダは、生き残っている。
あのテロ事件から5年が経過した今、欧米諸国では、アルカーイダが結果的にどうなっているのかが、議論の的になっている。先日も、BBCが特別番組を組み、アラブ各国のオピニオン・リーダーを集めて、電話による討論会を開催していた。
アルカーイダの実態について、知る国や機関は、非常に限られているが、パキスタンの情報部(ISI)は、最もアルカーイダの実態を把握している、数少ない機関であろう。なんとならば、ISIはアフガニスタンの各組織に支援を送りながら、これまでコントロールしてきたからだ。
そして、アフガニスタンのタリバンやアルカーイダのメンバーは、現在、主にアフガニスタンとパキスタンの国境地帯の部族地域(トライバル・エリア)に潜伏しているからだ。
そのISIが、最近になってアルカーイダの残党の数は、80人程度だと語っている。しかし、これはあくまでも、トライバル・エリアに残存する、アルカーイダという意味であって、すでにアフガニスタンから国外に出た、アルカーイダのメンバーの数を、含んでいるのではない。
アルカーイダのメンバーは今、ヨルダンやシリア、レバノンなどで、リクルート活動を行い、新しいアルカーイダ・メンバーを、イラクに送り込んでいるということだ。イラクの治安担当者は、アルカーイダの活動が沈静化したように思えるのは、大都市部から追い出した結果であり、彼らはイラクの地方に、散っただけだということだ。
同時にアルジェリアを基盤に、北アフリカ諸国でも、アルカーイダは拡大しつつある。チュニジア、モロッコ、ソマリアでも、アルカーイダと関係を持つ組織が、次々と誕生している。
サウジアラビア国内では、これまで外人住宅地区(コンパウンド)に対する攻撃や、警察幹部暗殺、市街戦といったことが、アルカーイダによって、実行されている。
治安の専門家の間からは、アルカーイダがイランと連携をするようなことになれば、危険度は高まることから、何らかのイランとの妥協が、必要だという考えが出てきている。
世界のイスラム教徒の中には、キリスト教徒によって占領される、あるいはキリスト教徒の支配下にある、イスラム諸国の体制を、打倒するのはイスラム教徒の義務だ、と考える者が少なくない現状では、アルカーイダのリクルートは、まだ成功の余地が残されている、ということではないか。
アルカーイダによる、西側諸国への次なる攻撃が行われるとすれば、それは、大量破壊兵器を使ったものになるだろう、という予測がなされている。それは、アメリカのワシントンであるかもしれないし、イギリスのロンドンになるかもしれないということだ。