バルザーニ甥PKK攻撃はトルコ・クルド関係破壊目的

2008年10月10日

 イラク北部のクルド地区を統括する、バルザーニ議長の甥である、ネチルバン・バルザーニ氏は、先週起こったPKKによる、トルコのアクトトン軍基地攻撃について、クルドとトルコとの関係を、悪化させるためのものだと非難した。

 このPKKの攻撃にどう対応するか、トルコの議会や内閣で、現在激論が交わされている。トルコ国民や政府の要人とすれば、PKKの攻撃に対し、沈黙を守ることは、耐えられないことであろう。

 しかし、だからと言って、トルコがPKKの拠点に対し、報復攻撃を加えたとしても、それは十分な成果を挙げることはできまい。そうなればトルイコは、イラク領土内のクルド地区に対する攻撃を、考えざるを得ないということになるが、欧米諸国をそれを、快く認めるとは考えにくい。

 トルコ政府はクルド自治政府側に対して、安全地帯の構築を打診しているようだが、クルド自治政府はそれが期待するような、効果を生むとは考えておらず、賛成しかねるという立場を、トルコ政府側に伝えたようだ。

 結果的に、トルコ政府は国民の怒りの高まりと、国際政治のはざまで、対応に苦慮することになろう。

 実はこうした状況は、アメリカにとって、好都合なのではないかと思われる。アメリカ軍はイラク国内で、一応の成果をあげ、大部分の地域の治安権を、イラク軍や警察に、移譲することができるようになった。

 その結果を受け、アメリカ政府はイラク駐留のアメリカ軍を、アフガニスタンに移駐させたい、と考えているようだ。しかし、アメリカ軍が大規模に、イラクからアフガニスタンに移駐することになれば、せっかく安定化の方向に向かい始めているイラクが、再度混乱状態に陥っていくことになろう。

 そこで、撤退するアメリカ軍の数に、ほぼ匹敵する数のトルコ軍が、イラクに進駐してくれることを、アメリカは期待しているものと思われる。今回、PKKが行ったトルコ軍への攻撃の背景には、そうしたことも潜んでいるのではないか、と考えられるのだが、、。