エジプトで起こったムスリム同胞団の活動は、エジプト国内では禁止されているが、アラブ全域に広がり、その分派もたくさんできている。このイスラム教組織は、政治的な力も発揮しているというのが現実だ。そのことの危険さを、最初に察知したのが、ムスリム同胞団とともに、エジプトで革命を起こした、故ナセル大統領だった。
エジプト政府による弾圧から逃れ、多くのムスリム同胞団のメンバーが、当時(60年代)エジプトが社会主義であることから、王制のアラブ諸国に受け入れられ、後に大きな影響力を持つに至っている。
湾岸諸国やヨルダンが、その典型的な例であろう。サウジアラビアで現在問題となっている、イスラム原理主義の思想は、サウジアラビアのワハビズムによるが、それ以上に理論武装した、ムスリム同胞団によるのではないか。ビン・ラーデンなども、実はムスリム同胞団の影響を受けているのだ。
こうして考えてみると、現在トルコのAKP(開発公正党)は、ムスリム同胞団と同じような性格を持った政党だと思われるのだが、エジプトのムスリム同胞団幹部の、ムハンマド・ハビーブ氏はこれを否定している。
彼によれば、AKPは世俗的で民主的な、政党だということだ。そしてムスリム同胞団とAKPの、もうひとつの大きな違いは、AKPがアメリカやヨーロッパ諸国、イスラエルとの関係を持っているが、ムスリム同胞団はそうではないということだ。
そして、イスラエルについては、1948年のラインまでイスラエルが譲歩するのであれば認めるが、そうでなければイスラエルという国家を、認めないと語っている。
トルコのイスラム学者のなかには、アルカーイダを評価する人たちもいるが、ムスリム同胞団はこれを認めない、とも語っている。(皮肉なことにアルカーイダは、ムスリム同胞団から分裂して出来上がった、組織ではないのか)
エジプトのイラン・トルコの専門家、ムスタファ・レッベド氏はこの二つの組織の違いについて「AKPはイスラム愛国者たちによって運営されているが、ムスリム同胞団は世界規模のイスラム運動だ」と指摘している。
このムスタファ・レベッド氏の指摘は、非常に興味深いのだが、彼が気がついていないのは、AKPを後ろから支えている、トルコの宗教集団の存在だ。